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quantum mechanics
1-6. コンプトン効果
量子力学 - 太田 雅久

 コンプトン効果(或いはコンプトン散乱)を理解するために、どのような物理現象を扱うとしているかを考えてみましょう。

静止している電子に光が当るとでどうなるでしょうか?
光が波動として振舞うか、粒子のように振舞うかで二通りの状況を思い浮かべることができます。

(1)光が波動として振舞う場合
水面に1本の棒が立てられていて、波の位相が進行方向にそろっている平面波が棒を通過してゆくときの状況を考えて下さい。棒が電子の役割をするとしましょう。波が棒を通過すると、棒のまわりに、棒からの同心円の球面波が拡がっていくことは容易に想像できます。この球面波の波長は入射平面波の波長と同じです。

(2)光が粒子のように振舞う場合
剛体球の衝突によく似ています。光は電子にあたり、方向を変えて飛び去ります。その反動で電子も動き出します。光の粒の速さも変化するでしょう。これは入射平面波と異なる波長の光が散乱されてくることを意味します。 コンプトン散乱では、(2)の場合について、エネルギー保存則及び運動量保存則を使って、衝突後の光の振動数の変化や、電子の反跳速度を求めています。

実際に実験によって測定された散乱光のスペクトルは、この簡単な力学計算の結果で説明されています。

このことは、光は場合によっては粒子のように振舞うことを意味しています。回折現象や干渉の問題など、光が波として振舞わなければ説明できないものもあります。コンプトン散乱は光が粒子性を持つことを明らかにした実験です。

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