固体は原子の集合であり電気的な性質から見ると金属、半導体、絶縁体に大別される。これらの物質は古くから色々な用途に利用されているが、その中でも半導体は我々の近代生活には欠かせない物質である。近代生活を送っている我々は知らず知らずのうちに毎日のように半導体を通して統計力学や量子力学の原理を使い実験していると言っても過言ではない。統計力学や量子力学は数学的に表現すれば難解なところがある。しかし現象はそれ程難解ではない。(現に我々は毎日この現象を使って生活している)理論的側面を学習する前に実際に現象にふれてからこれらを学習した方が理解が速まることが多い。 一言で半導体といっても物理学で言う半導体と産業界で言う半導体では若干ニュアンスが異なる。物理的な観点からは金属でも絶縁体でもない物質が半導体である。半導体中での電子の振る舞いや光との相互作用は物理的に興味深く古くから研究の対象となっている。産業界ではより広義に半導体をとらえ、半導体を使用した素子を半導体と呼ぶことが多い。半導体と金属あるいは異種の半導体同士を接合することによって様々な機能性が現れ、多くの場合それを半導体素子として利用している。ダイオード、トランジスタ、IC、LSI、メモリ、CPU、マイクロプロセッサ(マイコン)などは情報関連素子であり、光検出器、粒子線検出器、温度センサー、磁気センサーなどのセンサー素子にも半導体は多用されている。その他発光ダイオード、半導体レーザ等の発光素子、太陽電池などの環境、エネルギー素子は半導体素子の代表例である。太陽電池は環境問題を解決する一つの手法として注目を集め、発光ダイオードは省エネルギーの光源である。現在の半導体の機能を他の方法で代用すると、ばく大な消費電力とばく大な体積が必要となる。半導体がこの世になければ地球環境は今以上に深刻な状況をむかえることになる。 このように半導体素子は情報通信を通して知的文明を発展させ環境問題にも貢献する重要な材料という側面と現代物理学の原理に密接にかかわっているという側面を合わせ持つ。したがって半導体を理解することは基礎物理学と応用物理学の双方を理解することにつながる。 |