社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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0-2 社会調査の倫理
0-2-4 個人情報の保護


調査者の義務

 社会調査を行う過程では多くの個人情報に触れる機会が多数あります。調査によっては個人の私生活について詳細に調べる必要があるものもあるでしょう。これらの記録については言うまでもなく、また有権者名簿や住民基本台帳からランダムサンプリングされた対象者リスト、それをもとに配布・回収された調査票の記入内容も重要な個人情報です。すべての調査者には、これら社会調査によって得られた個人情報を厳密に管理し、調査目的以外の用途に使われることのないよう常に配慮する義務があります。


調査法に応じた個人情報の保護

 アンケート法による調査の場合、調査票の内容はすべて数値データとして統計的に処理し、匿名化・一般化された形で集計・分析・公表されますが、調査の過程で得た標本台帳や回収された調査票は調査者の責任の下、厳重に管理しなければなりません。どうしても個人を特定することが可能な情報を電子データとして保存しなければならない時は、ファイルをパスワードによって管理することの他に、そのファイルを処理するパソコンをネットワーク接続から外すなどの対策が求められます。また、調査終了後、集計や分析などにおいて参照する必要が無くなった調査票は速やかに裁断して記入された内容が判別できない状態にしたうえで廃棄しなければなりません。
 面接法などによって得られた個人情報は、対象者のプライバシー保護の観点から、収集したデータの管理はもちろんのこと、公表の形式についても配慮する必要があります。得られた情報をどのような形で公表するのか(対象者の実名を出すかどうか、出さない場合でも個人が特定される可能性がどの程度あるのかなど)、対象者に説明し、必要な場合には協議し、きちんと同意を得なければなりません。さらに可能であれば、論文やレポート、報告書としてまとめたものに目を通してもらって、表現の妥当性や対象者の意図が正確に記されているかなどについてチェックしてもらうことが望ましいといえます。


参考:適切な調査実施のために
 日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)のホームページでは、適切なマーケティング・リサーチ実施のための綱領「マーケティング・リサーチ綱領」、個人情報およびプライバシーマーク制度に関するガイドライン、そして調査員教育のためのマニュアルなどが公開されています。
 調査を行う、という行為においてはマーケティング・リサーチも学術調査も遵守すべき倫理とルールに違いはありません。対象者に信頼される適切な社会調査を実施するためにも参考にしてください。


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