社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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0-2 社会調査の倫理
0-2-3 対象者に害を与えない調査を


調査者としての態度

 多くの社会調査は、調査者と調査対象者の相互作用によって成り立っています。よって調査者が対象者に何らかの影響を与えることで、それが相手にとって害となることもありえます。
 先に紹介した「社会調査倫理綱領」にもあるとおり、調査者は、調査対象者を性別や年齢、人種などによって差別的に取り扱うことは許されません。調査の現場においても、傲慢な態度をとったり、セクシャル・ハラスメントととられる言動や行動など対象者が不快に思うような行為をとることは論外です。また、調査票に含まれる質問文や報告書、レポートなどにおいても、差別的な表現が含まれないよう注意しなければなりません。

 このように明らかに対象者が不快に思う、対象者に害を与えるような調査は当然のことながら許されませんが、一方で、実際の調査においては判断に迷うケースもあります。例えば…

  • アンケート調査において、調査票に対象者の学歴や収入に関する質問項目を含めたい。
  • インタビューの過程で対象者の生い立ちについて詳しく質問したい。

調査の必要性と負担のバランスを考えよう

 アンケートの回答者にとって、自分の学歴や収入を聞かれることはあまり愉快なことではないかもしれません(調査対象者が最も答えたくない質問項目として「世帯収入・支出」が挙げられる、という調査結果もあります)。また、対象者によっては、自分の生い立ちを細かに話すことに抵抗がある人もいるでしょう。だからといって、これらの事柄について調査してはいけない、ということにはなりません。
ここで重要なことは、「○○○○について聞いてはいけない」、ということではなく、なぜそのようなことを聞く必要があるのか、調査者が事前に十分に検討し、その必要性を説明できるようにしておくことであり、なおかつ、その質問に対する回答の有無は対象者の自由意志にゆだねられるべきである、ということです。
 その事柄について聞くことの重要性や意義と、対象者が感じる負担のバランスを常に考えて調査を設計する必要があります。


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