社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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0-2 社会調査の倫理
0-2-2 インフォームド・コンセント


インフォームド・コンセント

 インフォームド・コンセントとは、もともとは医療分野における用語で、患者が自分の受ける医療行為の内容について十分な説明を受け、理解した上でその施術に同意することをいいます。社会調査においても、調査者は調査を受ける対象に対して、調査内容はもちろんのこと、対象者が受けると予測される負担、集められたデータの使用目的、データの公表のされ方などについて事前に十分に説明し、対象者の理解と承諾を受けたうえで調査を実施する必要があります。調査への参加は、調査対象者からの自発的なものでなければなりません。

 しかし、実際の社会調査の現場においては、必ずしも調査対象者が自発的に参加する形ではない調査というものも多数起こりえます。例えば…

  • ストリートミュージシャンの演奏に足を止めるのはどのような人々なのか観察したい。
  • どのような色遣いの家が多いのか住宅街を歩いて調べたい。
  • インターネットの掲示板に書かれた内容を分析したい。

 これらの調査の場合、いずれも観察される対象者は自発的に調査に参加しているとはいえません。しかし、だからといって、そこにいる全員に調査目的を説明してすべての対象者から承諾を得ることも現実的にはできません。


どのような調査が倫理に違反するか

 ではこのような調査は倫理に違反するものでしょうか。判断のポイントは2つあると考えられています。1つ目は、調査すること自体が対象者にどのくらい害を与えるか、ということです。承諾を得ずに調査することによって、対象者が不快な思いをする、あるいは損害を受ける可能性が少しでもある場合には調査計画を見直す必要があります。2つ目は、調査から得られた結果を公表することが対象者にどのくらい害を与えるか、ということです。調査そのものは対象者に害を与えなくても、公表の仕方によって、対象者のプライバシーが侵害される、対象者がその調査結果を見たときに不快な思いをする、そのような可能性が少しでもある場合には、やはり調査計画を見直さなければなりません。
 また、計画した段階では対象者に害がないように思えた調査でも、実際に行ってみると対象者からクレームを受けたり、説明を求められることもあります。そのような場合には、調査の目的と内容などについてきちんと説明し理解を求めることは当然ですが、理解が得られない、調査の対象となることを拒否された際には、対象者の意志を最大限に尊重しましょう。
 どのような調査が許されて、どのような調査が許されないのか、この点については研究者の間でも議論となります。対象者に直接コンタクトをとることが難しい調査を計画する場合には、過去の調査事例を検討することはもちろんですが、周囲の人々に意見を求めるなど慎重に調査を進めることが大切です。


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