社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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3-5 観察法の発表と表現
3-5-3 実習5:タウンウォッチング・レポートの完成


タウンウォッチング・レポート作成のチェックポイント
 タウンウォッチング・レポートはあなたたちが街を歩き、電車に乗り、人を見て得られたものをまとめ、現代社会の一端を分析するレポートです。従って、レポートという性格上、

  • 書くべき点
  • 書きたい点
という2つの側面があります。
 この注意書きでは、前者についてこれまで学生の皆さんのレポートで目に付いた点をまとめてあります。提出前のチェックにお使いください。

 これまでの経験上、学生の皆さんの場合、しつこいくらいに語って、われわれにはちょうどいい(それでも語り足りない)感じです。ゆめゆめ「これくらい書かなくてもいいだろう」と考えないでください。十中八九、書き足りないもんです。

入力編

データは一つのシートにまとめる
 調査した地域別に、調査対象別に、エクセルの異なるシートに入力されているものをよく見ますが、一つにまとめた方がより多角的な分析が可能になります。
 たとえば、第1シートに芦屋のデータを、第2シートに神戸のデータを入れるのではなく、両地域のデータを入れたシート(順番に並んでいる必要はありません)のどこか1つの列を「地域」とか「市町村」として、そこに芦屋、または神戸と入力すればよいのです。
 こうすれば、地域とは関係なく、自分が調査した全体の傾向性をまず示すことができ、その後から地域+家の大きさといった形で、クロス集計をすればいいのです。

通し番号を忘れずに
 入力されたデータは、ソート(並べ替え)したり、抽出したりとさまざまな角度から分析する対象となります。したがって、最初の状態にいつでも戻せるように、通し番号は必須となります。

入力規則は統一する
 全角の数字を使ったり半角の数字を使ったり…、「男」と入力したり「男性」と入れたり「male」と入れたり「man」と入れたり…、「アルバイト」と入れたり「フリーター」としたり…、「グループ」と入力したかと思えば他のところでは「仲間」となっていたり…、これでは集計するときに大混乱!用語は統一せよ!また、数字は常に半角で!

ちょっと待て、その分類は正しいか
 大変多い例。職業の分類で、「会社員」「OL」「学生」「小学生」「無職」「フリーター」「自営業」というのがありました。
 OLさんは会社員ではないのでしょうか?小学生は学生とは見なされないのでしょうか?無職とフリーターとは違うのでしょうか?自営業といっても内容はさまざまなのです。
 →「性別」と「職業」を組み合わせて抽出すれば、「OL」だけ取り出すことは可能
 →自分の分析する方向に合わせて、定義をはっきりさせる


レポート作成編
1.表紙
タイトルはこれでいいですか?
 いたずらにウケを狙ったり、漫然としたものは不可。ポイントが絞られたものに!楽しくなるタイトル、思わず読んでみたくなるタイトルというのもありますが、慣れないうちは妙なことを考えるとイチビリとみなされるだけです。

目次も重要な顔!
 単に、「はじめに→仮説→概要→集計・分析→結論→あとがき」ではなく、せめて、「はじめに」「仮説」「結論」くらいはサブタイトルを添えて、自分の調査・考察の方向性を明示してください。
2.まえがき
「はじめに」はコッテリと!
 タウンウォッチング・レポートは確かに実習の課題です。だから、ホンネは「しゃーなしに書くんや」かもしれませんが、課題であっても自分が目をつけたという事実には、その視線の背後に自己の問題意識のかけらがあるはずです。内面への旅の第一歩として、サブタイトルを考えながら、自分のまなざしを語ってみてください。
3.調査の概要
調査範囲は詳しく、明確に!
 どこで調べたかは、地図などを積極的に利用して明確に示してください。また、なぜその範囲にしたかも詳しく記述してください。

調査方法もまた詳しく、明確に!
 いつ、どこで、何を、どのような方法で(定点観測?車内全数調査?サンプリング?ある特定の対象だけ?….)調べたのか、対象を限定したならなぜそうした限定をしたかなど、「仮説を読んだらわかるだろう」と思わず、繰り返しになってもいいですから、詳しく語ってください。

忘れやすいのが調査項目とその説明….
 たとえば、電車のなかの人間の調査で、なぜファッションをチェックするのか、足の組み方を調べるのか、持ち物をどういった観点から調べるのかなど、自分はそれなりに意味を把握していても(そうも限らず曖昧なままのことが多いのも現実….)、他人にはなかなか伝わりにくいものです。「読めばわかる」「素データ表をみろ」ではアキマヘン!
 どのような点を、どのような理由でチェックしたのかをはっきり語ることは、読者に対するサービスという以上に、自分の方向性を明確にする重要な手段です。
4.集計、および分析
素データのまま単純集計(基本的項目は当然として、集計したすべての項目に)
 いきなりクロス集計に入る前に、取得したデータの中での男女比は?職業別の比率は?屋根の色の分布は?調べた車の中で国産車・外車の比率は?…、などなど、まずはデータ全体の傾向を示すことをお忘れなく。

分析視点に応じ、クロス集計
 →多くの場合、再分類が必要だし、ノイズデータの排除も必要
 分析に応じ、「無職」と「アルバイト」を統一したり、「中学生」「高校生」を「中高生」としたり…、少数しかなくグラフ化してもグラフを見にくくするようなデータをどかしたり…。
5.結論
分析結果の社会的意味・文化的意味を広く考察する
 もちろん、取得されたデータの限界を認識することは重要。
 ここでは、説教や感想や反省は不要。まず、知り得た人間行動は何故なのか?なぜこんな家が多いのか?なぜこんな色が流行るのか?…などなど、単に結果を提示するだけでなく、広く現代文化の文脈で考えてみて下さい。
 そのためには、書籍や雑誌・新聞記事など、いろいろな世界にヒントが転がってますから、こうしたものを検索・閲覧する労をいとわぬように。
6.あとがき
必要とあらば、ここで感想なり、反省なり、独り言を述べる
 現代社会に向かって説教したい人間は、ここで初めて好きなだけ説教を!

グラフ作成編
グラフの選択は大切
  • 量を示したいのか、率を示したいのか
  • その時々の値を示したいのか、変化を示したいのか
  • 縦軸・横軸の系列をよく考えて!どちらが主軸ですか?
  • 必ずしもグラフにこだわる必要がない場合もあります。
    例:平均値の相違を示せば十分な事項など
単位の表記は忘れやすいもの
  • グラフの「%」表記
  • 総数「N=」の明示

1つのグラフの示す項目は2つが望ましい
 煩雑になり、理解を超えてしまいます。ぎりぎり3つまで。

Try!
1. タウンウォッチング・レポートの完成
  • 前回の続きを行い、レポートを書いていこう
  • 講義ノートを参考に、タイトルのつけかた、図表番号など、読みやすいレポートを書いていく
2. レポートのチェックと自己評価
  • 今回の調査の反省点を考え、レポートの最後にそれを書く

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