社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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5-3 実験編―発信してつなぐ
5-3-0 序文


研究プロジェクトの目的―都市空間における地域コミュニティ形成の可能性
多様な人々が集まり移動する都市において、地域社会とは何か。家族や対面的な地縁関係を超えた、しかし、地域を基盤とした人と人とのつながり、住民の組織作り、地域コミュニティ形成の可能性を具体的な事例研究にもとづいて探ることが本調査プロジェクトの目的である。国際都市ロンドンを対象とし、都市の一区画にあるコミュニティ・センターの活動に注目し実地調査を行ってきた。具体的には、ロンドンのハマースミス&フラム・バラの旧グローブ区(現レイヴンズコート・パーク区とハマースミス・ブロードウェイ区に含まれる)にあるグローブ・ネイバーフッド・センター(1973年設立、非営利住民組織のコミュニティセンター)とその周辺地域を対象としている。実地調査でえた知見を調査対象に還元し地域活動の実践に活かす参加型調査をめざしている。

調査の経緯と本コンテンツの構成
本研究は、甲南大学より2001年9月から一年間、ロンドンでの在学研究の機会をえて始まった。2003〜2005年には、毎年8月に1ヶ月ロンドンに滞在しフィールドワークを行っている。2004年度からは4年にわたり、日本学術振興会・科学研究費補助金基盤研究C「都市空間における地域コミュニティ形成の可能性についての文化人類学的研究」を受けている。2004−05年度には、同基盤研究「文化研究における映像と音(声)利用の可能性―大学教育現場への適用を前提として」(代表:甲南大学・森田三郎)に参加した。
2003年度から甲南大学情報教育センターの甲南大学サイバーキャンパスネットワーク事業により社会調査工房オンラインが開設され、社会学科教員として本コンテンツ作成に参加することができた。株式会社ナスピア(KNOSPEAR Inc.)が制作を担当している。現場での作業を行うフィールドワークについて、教室での講義や自学自習の「教材」のなかで、どのように伝えることができるか、その実験的試みが、2005年度に更新した5フィールドワークの次のような3部構成となっている。
5-1基本編―フィールドワークを始める人へ
(フィールドワーク初心者への入門的な概論)
5-2事例編―ロンドン、都市の地域社会、コミュニティ・センター
(進行中の調査研究をフィールドワークの一事例とし、コンテツを更新して掲載)
5-3実験編―発信してつなぐ
(英語版の調査報告をオンラインに掲載することで交信の可能性を開く)

立体的レポート―発信してつなぐ
5-3「実験編―発信してつなぐ」は、日本語論文、西川麦子「ロンドン、ハマースミスにおける1970年代のコミュニティ開発の実験的試み」(甲南大学紀要、文学編131 社会学科特集、2004年、pp.79-108)がもとになっている。2004年夏の調査では、その英訳論文(翻訳:庄司早春)を関係者に配布しさまざまなコメントを受け議論をかわし、新たな情報、資料収集をおこなった。5-3に掲載するレポートでは、こうした住民の意見をとりいれ論文を加筆修正し、写真、地図、統計資料の図表、ニューズレターなど、多種多様なドキュメントを挿入した。インタビューの音声も一部、含まれている。紙媒体とは異なるデジタル・コンテンツの利点をいかし立体的なレポートをめざした。また、オンラインを利用して、実地調査でえた資料、知見を公開することにより、情報を広く共有したいと考えた。発信することにより人と情報をつなぎ交信しながら調査研究を展開してゆきたいと考えている。本コンテツ自体をイギリスや日本といった特定の場所をこえたインターネット上のフィールドワークの現場とする実験的な試みである。

謝辞
グローブ・ネイバーフッド・センターの関係者の方々からは、2001年のロンドン滞在中から公私にわたり暖かい励まし、協力をえている。ハマースミス在住の住民から貴重なお話を伺った。ハマースミス&フラム公文書・郷土史センターやハマースミス&フラム・バラのタウン・ホールにおいては、調査へのアドバイスを受け資料提供などの協力をえた。日本学術振興会、甲南大学からは、研究助成と貴重な研究機会を受けている。深く感謝申し上げます。


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