社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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6-3 資料探索の実例
日本のバイクはこれからだ! −反抗のシンボルから体感するメディアへ
6-3-4 本論をまとめる


本論をまとめる
 最後に、レポートの内容をまとめる。「はじめに」で調査・解説すべき問題を提示したが、最後のまとめでは、その問題について調査中に分かったことや感じたこと、今後の展望などを交えながら、自分の意見を述べよう。
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例文

日本のバイクはこれからだ! −反抗のシンボルから体感するメディアへ

 おわりに

 最近、よく、日本のバイクは「保守的になった」と言われる。しかし、何をもって「保守的」というのか?バイク文化は、分かりやすい「外部」ではなく、「内部にある外部」に向かう文化へと変化した。それは、グローバルな文化が伝播し定着する際に最終的に向かう「成熟」と考えることもできる。バイク文化は、確かに、カウンターカルチャーではなくなった。しかし、バイク乗りのドキドキを保証する「外部」までなくなったわけではない。その「外部」のあり方が変わっただけである。

 ここで見てきた「内部にある外部」は、「体感できる気持ちよさ」であった。つまり、日本のバイクは、「反抗のシンボル」から「体感するメディア」へと変化した。すでに「内部にある外部」へと照準をしぼっていたハーレーはそのトレンドに乗り、それに乗り遅れた日本のメーカーも、たとえばホンダが、CB1100で、ようやく日本独自の「体感するメディア」の開発に成功した。それは、マルチエンジンの鼓動感+スムーズな加速感+ネイキッドならではの一体感という、1990年代のネイキッドブームからカウンターカルチャー的な要素を取り除き、さらに純化させたようなもので、まさしく「ジャパニーズスタンダードの復権」と呼ぶべきものであった。

 しかし、それは、新たなバイクの進化の一側面にすぎない。これからも出てくるであろう「内部にある外部」をつかまえることができるか否か。それが、これからのバイクの開発の鍵を握るだろう。

 成熟社会におけるマーケティングの基本は、ひたすらローカルなニーズを掘り起こしていくことである。特にバイクは、クルマとは異なり、運転が、その土地の気候や道路状況の影響を受けやすく、地域ごとのニーズに大きな違いを生じやすい。日本なら日本の、アメリカならアメリカの、イタリアならイタリアの、中国なら中国のバイク乗りの感じる「気持ちよさ」があるはずだ。メーカーは緻密な市場調査と大胆な技術革新を同時に進めていかなくてはならない。

 最近、バイク好きの若者と話をしていて感じるのは、バイクというものに対して、とても無邪気に接しているということである。「○○はかっこいい」、「○○は速い」、「○○は乗りやすい」といったバイク好きの間の普通の会話のなかに、「△△に反抗する」だとか「△△から逃れる」だとか「△△に憧れる」だとかいう意味は付与されていない。「文脈レス」の彼らの心に響くバイクをつくることができるか。それに成功し、ポスト・グローバライゼーションのバイク文化を先導するのはどのメーカーか。バイクに関わるすべての企業の想像力が、今こそ、試されている。


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