原価部門(cost department)とは、「原価の発生を機能別、責任区分別に管理するとともに、製品原価の計算を正確にするために、原価要素を分類集計する計算組織上の区分」(原価計算基準16)であり、製造工場では製造部門と補助部門に分類される(図表7-1)。
製造部門(production department)とは、製品の製造に直接従事する部門であり、製品の種類別に、製造の段階別に、さらには製造活動の種類別に細分される(例えば、鋳造部門、鍛造部門、機械加工部門、組立部門などに該当する)。なお、副産物の加工、包装品の製造などを行ういわゆる副経営も製造部門とみなされること、また、生産プロセスとの関係で製造部門が工程と呼ばれることが多いということに注意したい。
一方、補助部門(service department)とは、製造部門に対して補助的関係にある部門で、補助経営部門と工場管理部門に分類できる。補助経営部門には、自己のサービスあるいは生産物を主として製造部門に提供し生産活動に直接関与しない動力、用水、運搬、修繕、検査部門などが該当する。また、工場管理部門は工場全体の事務・管理を担当する補助部門であり、工場事務部、企画部、労務部などがこれに該当する。
一般にいう「部門」と原価計算基準でいう「原価部門」とは厳密にいえば同じでない。部門は管理組織単位を意味する。一方、原価部門は原価集計単位を意味する。原価部門を設定するときの基本原則は、まず、機械や設備の種類別に設定すること(機械中心点)、作業の種類別に設定すること(作業中心点)の二つである。これは機械のあるところ、作業がなされているところに原価が発生する要因があることによる。また、原価部門が原価管理に役立つためには、原価部門をできるだけ責任・権限の区分とも一致させるように設定すべきである。これを責任中心点(responsibility center)という。機械中心点、作業中心点、責任中心点という7つの中心点が合致すれば問題がない。しかし、実際には責任区分と該当する設備、作業の性質が一致しないこともあるので、部門別原価計算の目的との関係から、これら7つの中心点を考慮して原価部門を設定することになる。すなわち、より正確な原価を算定したい場合には、設備と作業の性質を重視し、より適切な原価管理を行いたい場合には、責任・権限の区分を重視する。
こうして設定された原価部門に対して、広義におけるコスト・センター(cost center)という用語を付与することがある。しかし、厳密には原価部門とコスト・センターは区別される。つまり、通常、コスト・センターは、原価部門をさらに機能的に細分した原価集計の最小単位を指す。細分したコスト・センターに原価を集計することで、責任者はさまざまな職能や活動にどれくらいコストがかかっているかを知り、原価改善に役立てることができる。
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