個別原価計算は部門別計算を行うか否かによって、単純個別原価計算と部門別個別原価計算とに分けられる。単純個別原価計算は、原価計算を簡略に行うために部門別原価計算を省略したものであり、規模の小さい、単純な生産工程の企業で採用されることが多い。一方、部門別個別原価計算は、第3章で説明したように、規模が大きくなり、生産工程も複雑化した企業において採用されるもので、原価部門を設けて原価を集計し、製造間接費の配賦計算の精度を確保することで、製品別原価計算をより正確に行うものである。実務では、製造間接費のみを部門別に計算し、直接費は費目別計算から、直ちに製品別に集計する製造間接費部門別個別原価計算が少なからず採用されている。
また、個別原価計算は、特定製造指図書で指示される製品数量が1個であるか、2個以上であるかによって、純粋個別原価計算とロット別個別原価計算とに分けられる。純粋個別原価計算とは、ビル建設業、特殊な機械製造業など1個の製品について受注、個別に仕様を決定して生産を行う場合の個別原価計算であり、最終的に原価計算表に集計された原価がその製品の原価となる。ロット別個別原価計算は、特定製造指図書別に集計された原価をロットの数量(製造量)で除して、製品単価を計算するところが純粋個別原価計算と異なる。
以下の説明では単純個別原価計算と製造間接費部門別個別原価計算を中心に取り上げる。
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