個別原価計算では、製品の製造開始から完成までに要したすべての費用を原価として集計する。製品を受注し製造にかかるとき、製造指図書(production oreders)が発行される(図表8-2)。製造指図書は製造命令書ともいわれ、書面による命令を原則とする工場指図書(factory orders)制度の代表的なものである。すなわち、製造指図書は製品の一定数量の製造を書面によって命令するものであり、同時に、添付書類でもって材料仕様や作業仕様等を指定する。したがって、この指図書により製造活動が秩序づけられ、製造活動の管理や製造原価集計のために必要な諸資料が組織的に収集整理されることになる。 製造指図書は、生産方式の違いによって特定指図書(specific job orders)と継続指図書(standing production orders)の2種類に分類されるが、その様式は一様ではない。特定指図書は個別指図書(job orders)ともいわれ、特定製品または特定作業に出される製造命令であり、個別原価計算と密接に結びついている。また、継続指図書は、継続製造命令書ともいわれ、同種製品を反復継続して量産するために用いられる。これは、総合原価計算実施の基礎として利用される。
個別原価計算を採用する企業では、顧客から製品の注文を受ける都度、特定製造指図書を発行し、特定製造指図書別(製品別)にそれぞれ原価計算表を作成する。すなわち、その製品の製造が進むにつれて、発生する様々な原価要素が原価計算表(図表8-3)に順次記入される。原価計算表は、原価を集計・計算・明示する表である。原価計算表の様式は、各原価の金額に加えて単価・数量を記入する様式があるばかりでなく、原価計算方法とか利用目的によって多種多様である。個別原価計算では、特定製造指図書別に原価計算表が作成され、さらに、これらの特定製造指図書別の原価計算表を一つの表にまとめた製造指図書別原価計算表が作成されることが多い。図表8-8は、部門別計算を行っている場合の製造指図書別原価計算表である。
製品が完成したら、原価計算表に記入した原価を集計し、製品の原価を求める。
図表8-2 製造指図書の例
図表8-3 原価計算表の例
原価計算表 | ||||
摘要 | No.1001 | No.1002 | No.1003 | 合計 |
直接材料費 | ××× | ××× | ××× | ××× |
直接労務費 | ××× | ××× | ××× | ××× |
直接経費 | ××× | ××× | ××× | ××× |
製造間接費 | ||||
加工部門費 | ××× | ××× | ××× | ××× |
組立部門費 | ××× | ××× | ××× | ××× |
合計 | ××× | ××× | ××× | ××× |
8-2 | 8-4 |