個別原価計算における製造原価の特定製造指図書別の原価計算表への原価集計は、特定製造指図書別に消費額を把握できる製造直接費と、特定製造指図書別の消費高を明確に把握できない製造間接費に分けて実施する。
単純個別原価計算の場合、原価を集計し原価計算表を作成する流れは図表8-5のようになる。製造直接費は、消費の都度、あるいは、一定期間(一週間あるいは10日など)ごとに、当該特定製造指図書の原価計算表に直課される。製造間接費は、通常1ヶ月ごとに実際消費額を集計して、月末に配賦基準にもとづき各特定製造指図書に配賦する。しかし、製造間接費の配賦率は、原価要素価格や操業度の変動によって左右されるのみならず、月末経過後でなければ実際値(実際配賦率)が計算できないという理由から、原価計算表の作成にあたり、予定配賦率で計算した予定製造間接費を用いることも多い。なお、ここで、実際配賦率は、原価計算期間(通常1ヶ月)の実際製造間接費総額を同期間の実際配賦基準総数で除して求められる。予定配賦率は、会計期間(通常1カ年、3ヶ月、1ヶ月などの場合もある)の予定製造間接費総額を同一期間の予定配賦基準総量で除して求められる。予定配賦率を用いた場合は、製造間接費配賦差異勘定を設けて、一定期間の予定配賦額と実際発生額との差異を処理する必要がある。
一方、部門別個別原価計算では、原価の費目別計算の後、部門別計算が行われ、その結果を原価計算表に集計する。製造間接費部門別個別原価計算の場合、原価を集計し原価計算表を作成する流れは図表8-6のようになる。この場合、製造直接費は単純個別原価計算と同様に処理される。
図表8-5 原価計算表の作成(単純個別原価計算の場合)
図表8-6 原価計算表の作成(製造間接費部門別個別原価計算の場合)
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