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原価計算 杉山善浩
第9章 総合原価計算

9-6  減損・仕損の処理

(1)減損・仕損とは

総合原価計算において、投入量合計(月初仕掛品数量 + 当月投入量)と産出量合計(完成品数量 + 月末仕掛品数量)を比較し、産出量合計のほうが少ない場合は、歩減が生じている。歩減の原因には、減損(waste)と仕損(spoilage)が考えられる。減損とは、製品の加工中に原材料の一部が蒸発、粉散、ガス化、煙化などの原因によって消失するか、または製品化しない無価値な部分が発生することをいう。また、仕損とは、製品の加工に失敗し、一定の品質や規格を満たさない不合格品が発生することをいい、その不合格品を仕損品という(原価計算基準27)。
総合原価計算では、歩減に対する損失(減損費と仕損費)を考慮して計算する必要がある。減損費は、減損の発生までにかかった原価を集計して計算する。また、仕損費は、仕損品原価(仕損にかかった原価)から仕損品評価額を控除して計算する。

(2)正常減損費(正常仕損費)の処理

製品の加工中に、その発生が避けることのできない歩減を正常減損(正常仕損)という。これに対して、異常な原因によって発生する歩減を異常減損(異常仕損)という。正常減損(正常仕損)の場合、その発生額(正常減損費と正常仕損費)は製品を製造するために必要な原価と考え、1.完成品のみに負担させるか、または、2.完成品と月末仕掛品の両者に負担させる。なお、仕損品の評価額がゼロであれば、その処理方法は減損と同じなので、以下の要点では、減損の処理のみを説明する。

(3)正常減損が工程の終点(または、月末仕掛品の加工進捗度より後の地点)で発生する場合

正常減損が工程の終点(または、月末仕掛品の加工進捗度より後の地点)で発生する場合、正常減損費は、完成品のみに負担させる。正常減損費を完成品に負担させるとき、1.別個に正常減損費を計算しないで自動的に負担させる方法(度外視法)と、2.正常減損費を別個に計算する方法(非度外視法)がある。度外視法(method of neglect)を用いた場合の、平均法ならびに先入先出法による月末仕掛品原価の計算式を示すとつぎのようになる。

平均法の計算式

先入先出法の計算式

(4)正常減損が工程の始点(または、月末仕掛品の加工進捗度より先の地点)で発生する場合

正常減損が工程の始点(または、月末仕掛品の加工進捗度より先の地点)で発生する場合、正常減損費は、完成品と月末仕掛品の両者に負担させる。なお、正常減損費を両者に負担させるとき、度外視法と非度外視法がある。度外視法を用いた場合の平均法による月末仕掛品原価は、つぎのように計算する。計算式の分母に、正常減損数量(正常減損完成品換算量)を含めないことで、月末仕掛品にも正常減損費を自動的に負担させることができる。

平均法の計算式

また、度外視法を用いた場合の先入先出法による月末仕掛品原価は、つぎのように計算する。計算式の分母に、正常減損数量(正常減損完成品換算量)を含めないことで、月末仕掛品にも正常減損費を自動的に負担させることができる。

先入先出法の計算式

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