標準直接原価計算(standard direct costing)は、標準原価計算と直接原価計算の結合したものであり、原価管理(cost management)および利益管理(profit management)に役立つ原価計算技法である。このような管理機能を効果的に発揮させるためには、予算管理制度などとの有機的な結合が重要である。
標準直接原価計算の特徴は、つぎのように要約される。
標準直接原価計算は、予算管理制度と連動しながら、次の様なてつづきをふむ。
標準直接原価計算を採用する場合にも、標準全部原価計算と同様に、あらかじめ原価標準を設定しておく必要がある。ただし、原価の範囲が異なる点に注意が必要である。
一般的に、標準全部原価計算では、製造原価(変動製造原価+固定製造原価)にたいして原価標準を設定し、販売費及び一般管理費には設定しない。
一方、標準直接原価計算では、変動費(変動製造原価+変動販売費)にたいして原価標準を設定し、固定費については、予算管理制度と連動させる。
標準直接原価計算において、差異は次のように分析される。
売上高差異 | =価格差異、数量差異 |
直接材料費差異 | =価格差異、消費量差異 |
直接労務費差異 | =賃率差異、作業時間差異 |
変動間接費差異 | =変動間接費消費差異、変動間接費能率差異 |
販売費および一般管理費差異 | =変動販売費差異、固定販売費および一般管理費差異差異 |
固定製造間接費差異 | =固定製造間接費差異、操業度差異 |
標準直接原価計算の様式で確定されたものはない。その一例を示してみると次のようである。
損益計算書T | 売上高 | ××× | |
U | 標準変動売上原価 | ××× | |
標準変動売上原価 標準変動製造マージン |
××× ××× |
||
V | 標準変動販売費 標準貢献利益 |
××× ××× |
|
W | 変動原価差異 1.価格差異 2.数量差異 3.賃率差異 4.作業時間差異 5.変動間接費消費差異 6.変動間接費能率差異 7.変動販売費差異 |
××× ××× ××× ××× ××× ××× ××× |
××× |
X | 固定費 1.固定定製造間接費配賦額 2.固定販売費および一般管理費予算額 |
××× ××× |
××× |
Y | 固定原価差額 1.製造間接費消費差異 2.操業度差異 3.固定販売費および一般管理費差異 |
××× ××× ××× |
××× |
営業利益 | ××× |
標準直接原価計算から実際全部原価計算への修正計算をする場合、まず、固定費製造原価を調整し、その上で、標準原価差額を調整する方法と、標準原価差額を調整し、その上で、固定費製造原価を調整する方法とがある。
11-2 | 11-4 |