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原価計算 河野充央
第12章 営業費計算

12-2  営業費の範囲と分類

営業費の範囲は、広狭さまざまに解釈できる。営業費管理会計では、販売費のみを営業費と捉える見方もあれば、販売費、物流費、営業管理費のすべてを営業費と捉える見方もある。営業費財務会計では、販売費だけを営業費とする考え、販売費のほかに、一般管理費と営業外費用の一部を営業費に含める考え、販売費、一般管理費、そして、営業外費用のすべてを営業費に含める考えの3つがある。本章では、販売費および一般管理費を営業費の範囲と捉えて、その会計管理の方法を説明する。営業原価計算という立場から、営業費を考察すると、つぎのように分類できる(原価計算基準8)。

  • 形態別分類:財務会計における営業費の発生形態にもとづく分類で、給料、賃金、消耗品費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、電力料、租税公課、運賃、保管料、旅費交通費、通信費、広告料などに区分する。
  • 機能別分類:企業が実施するマーケティング機能の種類にもとづく分類で、営業費を、広告宣伝費、出荷運送費、倉庫費、掛売集金費、販売調査費、販売事務費、企画費、技術研究費、経理費、重役経費などに区分する。この分類では、機能について発生したことが、直接的に認識される費用を把握し、集計する。たとえば、広告宣伝係の給料・賞与手当、広告設備減価償却費等、広告宣伝関係の経費支出は、広告宣伝費として、倉庫係の給料・賞与手当、倉庫設備減価償却費等、倉庫関連の経費支出は、倉庫費として、把握・集計する。
  • 直接費と間接費:特定製品に直接的に要した販売費を直接販売費とし、共通的に発生する販売費を販売間接費とする。販売地域、顧客、販売方法など特定セグメントに直接発生するか否かで直接販売費と間接販売費に区分することもある。
  • 固定費と変動費:原価態様を基準にして、固定費と変動費とに区分する。営業費には、純粋な変動費が少ない。注文獲得費と営業管理費は、ほとんどが固定費である。
  • 管理可能費と管理不能費:原価責任を基準にした区分である。

原価計算基準による分類以外にも、セグメント別分類、区分可能・不能別分類、節約可能・不能別分類、注文獲得・履行別分類などの分類方法がある。

なお、機能別分類であるが、そこでは営業費を、「広義の販売費」と一般管理費とに大別し、広義の販売費は、狭義の販売費(selling costs)と物流費(physical distribution costs)とに細分される。販売費(狭義)とは、販売の原因となる活動に伴って発生するもので、所有権の流れに関する費用である。これは、注文獲得費(order-getting costs)ともよばれ、主として、売上注文を獲得するための営業費である。販売費(狭義)には、市場調査費、商品計画費、広告宣伝費、販売促進費、人的販売費等が含まれる。物流費とは、販売、ないし、受注の結果を受けて行われる活動に伴って発生するもので、製品の流れに関する費用である。これは、注文履行費(order-filling costs)ともよばれ、主として、売上注文を履行するための営業費である。物流費には、荷造包装費、運送配達費、倉庫保管費等が含まれる。

図表 12-1 営業費の分類

注文獲得費は、一般に、経営者の方針によって決定されるポリシー・コストの性格を有している。したがって、予算期間に対する企業の計画にもとづいた割当型予算として編成され、管理が行われ、支出の有効性が、常に問題とされる。他方、注文履行費は、一般に、売上高の増減と並行して変化する営業費であり、売上高との比率、すなわち、能率が問題となるので、標準原価計算や変動予算による能率管理の対象となる。なお、物流費と注文履行費とは、次の点を考慮して、区別すべきとの考えもある。

  • 集金費、および、アフター・サービスのコストが、注文履行費には含まれるが、物流費には含まれない。
  • 物流費には、流通に対するシステム的思考にもとづき、そのシステムの評価を実施するための対象であるという考えが含まれる。他方、注文履行費にはシステムを意識した考えは含まれない。
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