営業費の範囲は、広狭さまざまに解釈できる。営業費管理会計では、販売費のみを営業費と捉える見方もあれば、販売費、物流費、営業管理費のすべてを営業費と捉える見方もある。営業費財務会計では、販売費だけを営業費とする考え、販売費のほかに、一般管理費と営業外費用の一部を営業費に含める考え、販売費、一般管理費、そして、営業外費用のすべてを営業費に含める考えの3つがある。本章では、販売費および一般管理費を営業費の範囲と捉えて、その会計管理の方法を説明する。営業原価計算という立場から、営業費を考察すると、つぎのように分類できる(原価計算基準8)。
原価計算基準による分類以外にも、セグメント別分類、区分可能・不能別分類、節約可能・不能別分類、注文獲得・履行別分類などの分類方法がある。
なお、機能別分類であるが、そこでは営業費を、「広義の販売費」と一般管理費とに大別し、広義の販売費は、狭義の販売費(selling costs)と物流費(physical distribution costs)とに細分される。販売費(狭義)とは、販売の原因となる活動に伴って発生するもので、所有権の流れに関する費用である。これは、注文獲得費(order-getting costs)ともよばれ、主として、売上注文を獲得するための営業費である。販売費(狭義)には、市場調査費、商品計画費、広告宣伝費、販売促進費、人的販売費等が含まれる。物流費とは、販売、ないし、受注の結果を受けて行われる活動に伴って発生するもので、製品の流れに関する費用である。これは、注文履行費(order-filling costs)ともよばれ、主として、売上注文を履行するための営業費である。物流費には、荷造包装費、運送配達費、倉庫保管費等が含まれる。
図表 12-1 営業費の分類
注文獲得費は、一般に、経営者の方針によって決定されるポリシー・コストの性格を有している。したがって、予算期間に対する企業の計画にもとづいた割当型予算として編成され、管理が行われ、支出の有効性が、常に問題とされる。他方、注文履行費は、一般に、売上高の増減と並行して変化する営業費であり、売上高との比率、すなわち、能率が問題となるので、標準原価計算や変動予算による能率管理の対象となる。なお、物流費と注文履行費とは、次の点を考慮して、区別すべきとの考えもある。
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