品質原価計算(quality costing)は、品質管理の効果的・効率的な展開に資する原価データとして、品質保証活動費を算定しようとする。米国品質管理協会(American Society for Quality Control)が1960年代初頭に提唱した品質原価(品質保証活動費)の分類に「予防・評価・失敗アプローチ(Prevention-appraisal-failure(PAF) Approach)」がある。PAFアプローチによると、品質原価(quality costs)は、製品規格に一致させるための品質適合原価(costs of conformance)と、製品規格に一致させることに失敗したために発生する品質不適合原価(costs of nonconformance)からなる。また、品質適合原価は、製品規格に一致しない製品の生産を減らすための支出である予防原価(prevention costs)と、規格に一致しない製品を見つけるための支出である評価原価(appraisal costs)に分かれる。不良品(defective work)の生産により不可避的に発生する品質不適合原価は、出荷前に仕損品(spoiled work、 しそんじひん)を工場の中で処理する支出である内部失敗原価(internal failure costs)と、不良品を販売したことで発生する外部失敗原価(external failure costs)に分類される。
データが企業の会計制度から入手できる品質原価を直接的品質原価というが、予防原価、評価原価、内部失敗原価および外部失敗原価の中の直接的品質原価に次の科目がある。欠陥品が生産工程で発生するのを防止するために費やす予防原価では、品質保証教育訓練費、品質管理部門個別固定費、製品設計改善費、製造工程改善費などがある。これらは概して固定費であり、かつ経営管理者の裁量原価(discretionary costs)である。検査原価(inspecting costs, testing costs)とも呼ばれる評価原価は不良品が出荷されることがないようにするために支出する原価であり、受入材料・部品検査費、各工程の中間品検査費、完成品検査費などからなる。評価原価は、検査数量や仕損品数との関係で変動費といえないこともないが、一般的に、固定費で、かつ裁量原価である。内部失敗原価は、顧客に製品がわたる前に不適合が発見された場合の原価であり、製造工程中断費、不良品を合格品に手直しする補修費(rework costs)、および手直し不能な仕損品の処分費からなる。外部失敗原価は、顧客に欠陥のある製品またはサービスを提供したことで発生する費用や損失であり、販売製品補修費、取替・引取費、返品廃棄処分費、訴訟費、損害賠償費などからなる。
間接的品質原価は企業の会計制度からデータを入手できない品質原価であり、「隠れた品質原価(hidden quality costs)」ともいう。顧客が負担した修繕費・補修費、顧客ニーズを製品スペックに反映できないことによる潜在顧客の喪失といった機会損失がこれに相当する。
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