電磁波分析
電磁波分析は、物質の電磁波吸収または放射現象など物質と電磁波との相互作用により物質の化学的情報をとり出す方法であり、機器分析中もっとも広く利用されている方法です。これには次の各方法があります。
- 吸光光度分析 (visible absorption spectrophotometry)
- 濁度分析 (turbidimetry)
- 蛍光分析 (fluorometry)
- 紫外吸収スペクトル分析 (ultraviolet absorption spectrophotometry)
- 旋光分散法 (optical rotatory dispersion method)
- 円偏光二色性法 (circular dichroism method)
- 赤外吸収スペクトル分析 (infrared absorption spectrophotometry)
- ラマンスペクトル分析 (Raman spectroscopy)
- 原子吸光分析 (atomic absorption spectrophotometry)
- フレーム分析 (flame photometry)
- 発光分光分析 (emission spectroscopy)
- X線分析 (X-ray spectroscopy 吸収、回折、蛍光、発光を利用するもの)
- 電子分光法 (electron spectroscopy)
- 電子線分析 (electron ray methods)
- 核磁気共鳴吸収分析 (nuclear magnetic resonance spectroscopy)
- 常磁性共鳴吸収分析 (electron spin resonance spectroscopy)
これらの方法に対して、その相互作用する電磁波の波長もしくはエネルギーの大きさにより表1・1のように分類することもできます。
電磁波 領 域 |
波長cm |
エネルギー eV |
相互作用する対象 |
吸収現象を利用する 分析法 |
発光現象を利用する 分析法 |
その他の相互作用 による分析法 |
γ線 |
10-8〜10-13 |
104〜109 |
原子核 |
γ線吸収分析メスバウアー分光法 |
放射化分析 |
電子線分析 |
X線 |
10-6〜10-9 |
102〜105 |
内殻電子 |
X線吸収分析 |
蛍光X線分析 発光X線分光分析 |
X線回折分析 X線電子分光法 |
極紫外紫外1),2) |
10-4〜10-6 |
1〜10-2 |
外殻電子 |
原子吸光分析 |
原子蛍光分析 フレーム分析 発光分光分析 |
濁度分析 |
可視1),2) |
分子軌道電子 |
紫外吸収分析 吸光光度分析 円偏光二色性法 |
蛍光分析ラマン分析 |
旋光分散法 |
赤外2) |
10-1〜10-4 |
10-3〜1 |
分子 |
赤外吸収分析 |
− |
− |
マイクロ波 |
102〜10-1 |
10-6〜10-3 |
磁場中の不対電子 |
常磁性共鳴吸収分析 |
− |
− |
ラジオ波 |
102以上 |
10-6以下 |
磁場中の原子核 |
核磁気共鳴吸収分析 |
− |
− |
表1・1 電磁波と物質との相互作用による分析諸法の関連性*
1) 紫外や可視領域の波長はnm(ナノメートル)単位で表わすことが多い。
1m=102cm=103mm=106mm=109nm,1nm=10Å(オングストローム)
波長λ、波数 、振動数ν、光の速さcとすれば、 =1/λ=ν/cです。また、光のエネルギーEは、E=hν=hc /λ=hc (h:プランクの定数)から計算することができます。
EはkJ/mol、kcal/mol、eV(エレクトロンボルト、正しくはeV/molecule)などで表わす。各単位の換算係数は次表の通りです。
単位 |
- |
cm-1 |
erg/molecule |
eV/molecule |
kJ/mol |
kcal/mol |
1 cm-1 |
= |
1 |
1.986×10-16 |
1.240×10-4 |
1.196×10-2 |
2.859×10-3 |
1erg/molecule |
= |
5.034×1015 |
1 |
6.241×1011 |
6.021×1013 |
1.439×1013 |
1eV/molecule |
= |
8.066×103 |
1.602×10-12 |
1 |
96.48 |
23.06 |
1 kJ/mol |
= |
83.59 |
1.661×10-14 |
1.036×10-2 |
1 |
0.2390 |
1 kcal/mol |
= |
3.498×102 |
6.948×10-14 |
4.336×10-2 |
4.184 |
1 |
2) 紫外、可視、赤外領域を1)の単位を用い細分すると、次のようになります。