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環境計測のための機器分析法 茶山健二
1章 環境計測のための機器分析法
1-6  機器分析の欠点
 次に機器分析の一般的短所をあげると以下のようになります。
(1)  標準物質を必要とすること
 一部には標準物質を必要としない絶対測定法、例えば電量分析などがあり、応用もされていますが、一般には標準物質を必要とし、その測定値との比較で分析を行うのが通常です。 (したがって従来の化学分析は、たとえ長時間煩雑な操作を要しても標準物質なしに分析値が得られ、機器分析用標準試料の標準値を与えるという意味で、とくに無機分析では重要になることがしばしば起こります)。
(2)  分析値の有効桁数が一般に少ないこと
 機器分析においては最終的に記録計ペンで記録させる場合、100%表示で0.1%まで精度よく値を得ることは困難で、相対誤差0.5〜数%のものが多いのです。これに対し、化学分析では原理的に0.1〜0.5%の精度で値を得ることが可能であり、試料採取量その他の工夫によりさらに有効桁数を増やすことができます。しかし機器分析でも最近は、測定法または装置の進歩、さらにはコンピューター制御や処理により精度が向上しつつあります。
(3)  機器が高価なこと
 工場の現場分析など分析試料数、分析回数の多いときには、作業員数、分析時間の節約の面のみから考えても、高価な機器を買ってひきあいますが、分析試料数、分析回数の少ないときには問題となります。
(4)  機器の保守が面倒なこと
 たとえば機器を設置する専用の部屋が必要なことが多く、ときには恒温恒湿など空調の必要なこともあり、一般に保守が簡単ではありません。
 以上、機器分析の長所および短所を概略述べましたが、このほか一部の機器分析では、非破壊で分析ができます。また、現在までのところ、無機化合物を対象とする分析機器には元素分析用のものが多く、有機化合物を対象とするものには構造分析または組成分析用のものが多いです。なお。化学分析は各種の機器法の発展とともに、しだいに影が薄くなりつつあることは疑いありませんが、以上の観点から特定の試料に対しては絶対性、簡易性の点で意外に有力な手段となることもありますから、化学分析の適用も決して軽視すべきではありません。
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