分析機器の構成
分析機器には多くの種類や方式がありますが、利用者側からみる限りでは、機種の決定に影響する分析機器の性能の方がはるかに関心事であって、分析機器の構成にはそれほど関心が払われていません。しかし、一応は次の各要素を理解しているべきなので、以下に測定方法を簡単に系統的にまとめておきます。
(1) 信号の発生と分離
分析対象および分析目的に応じて、スペクトルの横軸 (質的特性) および縦軸 (量的特性) に当たる計測量すなわち信号 (signal) を発生させる必要があります。信号発生の方法には、他の化学種、光子、電子または高エネルギー粒子との相互作用、場 (磁場、電場、圧力、温度など) の作用によるものなど多くの方法があります。
次に発生した信号を適当な方法で分離し、目的とする信号のみを取り出す必要があります。光の場合にはプリズム、回折格子によってその分離を行い、クロマトグラフ法では分子間相互作用の差によって分離を行うことがこれに当たります。
(2) 信号の検出と変換
分離された信号を検出し、電気量などに変換する必要がありますが、この部分をトランスジューサー (transducer、変換器)といいます。信号が光、熱、放射線、粒子線、電気 (電位差、電流など)、磁気などによって、それぞれ光電管、熱電対、計数管などトランスジューサーの内容は異なりますが、いずれも分析機器の心臓部に当たるもので、新しく高性能のトランスジューサーが出現すると、それをそなえた新型の分析機器が考案され、それによる新しい分析方法が進展することになります。
(3) 電子回路
電気量に変換された信号は、電子回路により出力となります。電子回路には、電流→電圧、直流→交流、アナログ→ディジタルなどの変換回路、増幅のための増幅回路、標準との比較、微分、積分、計数などの計算をする演算回路、各種の変調を行う変調回路、これらの回路の作動に必要な電源回路などがあります。
(4) 出力の表示
出力の表示には、メーター、オッシロスコープなどの直視計器と記録計があります。記録計はアナログ型ペン記録計が多く用いられますが、最近はディジタル表示 (数字として表示する方式) もかなり用いられ、またコンピューターによる画像表示 (ディスプレー) も多くなりました。