先ず、吸光光度法を理解する上で、なぜ私たちは色を見ることが出来るかを考えてみましょう。人間の眼が色を識別できるのは、可視光自体に色があるからではなく、人間の網膜には光を感じる三種の錐体細胞があり、それぞれ異なった波長域の光によって刺激されることと関係があります。
その1つは、青錐体といわれるもので、450nmの波長を中心とした光により、青色の感覚を生じさせます。緑色錐体は、550nmを中心とした光によって、緑を感じます。そして、赤色錐体は、600nmを中心とした光によって、赤色を感じます。各錐体は同時に、バランスよく刺激を受けるとき、その光を白色と感じます。また、3種類の錐体への刺激がバランスを欠くとき、私達は、それぞれに応じた色を感ずることになります。
例えば、試薬の過マンガン酸カリウムの溶液が赤紫色に見えるのは白色光のうち、530nm付近の緑が吸収されて、残りの波長が眼に入るからです。このように、可視光線中のカットされた光の色と、残りの光による色とは、白色光を構成する上で、補色の関係にあります。補色の関係にある色をまとめたものをカラーサークルとよんでいます。(図2・1)
図2・1 カラーサークル
この現象を理解するには、白色高原と回折格子の間に黄色のクロム酸カリウムの溶液を置くと補色である青の部分が7色のスペクトルから消えて見えること、或いは赤紫色の過マンガン酸カリウム溶液を置くと緑色が欠けることを見てみると良いでしょう。(図2・1)
では、なぜ溶液が、そして物体が特有の色を示すのか考えてみましょう。