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環境計測のための機器分析法 茶山健二
2章 吸光光度法 色で分析する
2-6  Lambert-Beer の法則
Lambertの法則 (溶質の長さと光吸収との関係)
図2・6 光の吸収
 (図2・6)のように、濃度(concentration)の呈色溶液を液層の長さの容器(吸収セル)に入れ、これを単色光が透過したとき吸収が起こったとし、入射光束(incident beam)の強さを、透過光束(transmitted beam)の強さをとします。いま、液層を同じ長さの仮想的な薄い層に分けて考えると、溶液が均一であれば光が透過したとき各層は同じ割合だけ光を吸収する(光の強さを減じる)と考えることができます。例えば、第1の層が入射光の1/2だけ吸収したとすれば、透過後ははじめの光の強さの1/2となり、第2層ではさらにその1/2を吸収し、はじめの光の強さの1/4になります。以下同様にして第3、第4、・・・の層を透過後は1/8、1/16・・・なります。これをグラフに画けば指数曲線となり、またはと表すことができるのです。以上のことを数学的に扱えば、次のようになります。単色光が媒質の中を通過するとき、光束に直角な長さの薄層を考えると、を通過後の光の強さの減少量とに比例します。すなわち、
  (2・3)
これを変形すれば、
  (2・3)
両辺をそれぞれから、0からまで積分すれば、
,,
常用対数に直せば、
  (2・4)
となり、透過光の強さは媒質の長さが増加するにつれて指数関数的に減少する事になります。
Beerの法則 (溶液濃度と光吸収との関係)
 (図2・6)において媒質が均一ならば、光束の単位断面積については溶質分子の数は液層の長さに比例するから式(2・4)は、
  (2・4)
と書くことができます。またが一定のときには、分子間に相互作用の生じない程度の希薄溶液ではnは溶液の濃度に比例するから、(2・4)は
  (2・5)
となり、透過光の強さは溶液濃度が増加するにつれて指数関数的に減少することがわかります。
Lambert-Beerの法則
 LambertとBeerの法則は、が媒質の長さにも、溶液濃度にも比例することを示しています。したがって、は、それらの積にも比例し、
  (2・6)
と書くことができます。ここで、などで表したときの比例定数で吸光係数(absorptivityまたはextinction coefficient)と呼ばれます。で表したときにはの代りにとくにを用いモル吸光係数(molar absorptivity)と呼び、これは試薬の感度を意味する重要な数値です。また、を透過度(transmittance)といいで表し、これをで表したときには透過率(percent transmittance)といいと書く。さらに、を吸光度(absorbance)と呼ぶ。したがって式(2・6)は、
  (2・7)
のようになります。
 この法則は、Lambert-Beer、Bouguer-BeerあるいはBouguer-Lambert-Beerの法則と呼ばれ、光の吸収を定量分析に利用するための基本となる法則ですが、これが厳密に成り立つためには、次の条件が必要です。
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