化学的前処理のうち吸光光度分析にとって本質的な発色反応は、その反応機構により、酸化、キレート生成、イオン会合、付加、塩生成、ヘテロポリ酸生成とその還元などに分けられます。これらのうちキレート生成を利用するものが大部分で、(図2・7)は、構造別に分類したキレート性発色試薬の例です。
図2・7 キレート性発色試薬の例
定量分析に用いられる発色反応に関して望まれる条件は、以下のような条件です。
- 鋭敏(sensitive)であること。
- 選択的(selective)または特異的(specific)な反応、すなわちできる限り目的成分とだけ反応すること。
- 反応が速やかに起こり、pH、温度、試薬濃度、共存物質の影響が小さいこと。
- 呈色が長時間安定なこと。
- 呈色化学種がLambert-Beerの法則に従うこと。
- 発色試薬自身安定で入手しやすく、なるべく試薬自身が呈色していないこと。
発色試薬はきわめて多いのですが、上記の条件でこれらのすべてを満足するものはほとんどなく、液性の調節、妨害物質の分離、またはマスキングをすることで個々の化学種の分析を行います。