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環境計測のための機器分析法 茶山健二
2章 吸光光度法 色で分析する
2-9  感度と選択性
 以上のことから、鋭敏な発色試薬としては非常に高度の共役系をもった大きな有機分子が望ましいのですが、一方、立体障害のために反応性が悪くなります。三元錯体(ternary complex)の生成を利用する方法は、この欠点をある程度解決するので、増感法としてよく用いられます。例えば、銀、1,10-フェナントロリン(phen)、ブロモピロガロールレッド(BPR)より成る錯体では、一次錯体の分子がさらにとイオン会合してを生成し、は51000で選択性も増加します。なお、配位子の1つに非金属イオンを選べは、これを感度よく定量することができます。
試薬の選択性
 発色試薬に選択性を与えるには、立体障害を生じるような基を適度に導入するのが1つの方法です。例えば、オキシンはアルミニウムと反応しますが、2-メチルオキシンはこれと反応しません。また1,10-フェナントロリンは鉄(II)のほか銅(I)とも反応しますが、2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン(ネオクプロイン)は銅(I)としか反応しません。しかし構造的な観点から、完全に1つの元素としか反応しない試薬を作ることは困難で、上例のネオクプロインも大量のコバルトとは反応します。この他、前項に記した三元錯体の利用も有効な場合があります。
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