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環境計測のための機器分析法 茶山健二
4章 原子吸光分析法 ヒントは太陽にあった
4-3  原子スペクトル
 では、なぜ原子がある特定の波長の光を吸収するのか考えてみましょう。
 原子は、基底状態より励起状態へ遷移するときにある特定波長の光を吸収し、その励起状態から基底状態へ遷移するときに発熱或いは発光します。この発光スペクトルは、原子スペクトルといい線スペクトルです。これらのスペクトルは、2つのエネルギー準位間の遷移により生じます。例えば水素の場合には、
 で表されます。
 ここで、または量子数(正の整数)ではRydberg定数と呼び、109737cm-1です。多電子原子の場合には、主量子数の他に、全軌道量子数、全スピン量子数、全内部量子数が加わりスペクトルはより複雑となります。スペクトル線を生じるエネルギー遷移の様子を図に示したものをグロトリアン図といいます。(図4・2)ナトリウムの2本のD線は、589.59nm及び588.99nmのスペクトル線に相当します。
図4・2 ナトリウム原子のグロトリアン図
原子吸光分析
 原子吸光分析は、上述したように、キルヒホッフによって早くからその原理が解明されていたにもかかわらず、フレーム分析等の原子発光分析に遅れること、100年の後に実用化することになります。現在では、優れた装置や光源が開発されて、多くの元素の測定に用いられているのです。
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