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環境計測のための機器分析法 茶山健二
4章 原子吸光分析法 ヒントは太陽にあった
4-7  干渉
 測定に影響を与える因子には次のようなものがあります。
分光干渉
 2つのスペクトル線の重なりによる影響は原子吸光の場合それほど多くはありませんが、たとえば、鉛(共鳴線216.999nm)の分析の際に、アンチモン(共鳴線217.023nm)が共存すると、共鳴吸収線が重なり、鉛の分析値に影響を与えます。
物理干渉
 濃厚溶液や粘度の高い溶液、酸性度の高い溶液では、フレーム中への噴霧効率が悪くなり、感度に影響します。適度に希釈するか検量線作成の際主成分を同量加えるなど、同じ溶液状態にし、粘度、表面張力、蒸気圧などの影響を避ける必要があります。
溶媒
 これは干渉ではありませんが、有機溶媒を添加すると、一般に試料の吸上げ量の増加と、噴霧粒子の微細化が起こり、フレーム温度も上がり、感度が向上します。アルコール類、アセトン、4-メチル-2-ペンタノンなどは特に有効であるといわれています。
化学干渉
 イオン化干渉は、高温フレームやイオン化エネルギーの低い元素の場合に起こりやすく、イオン化により感度が低下します。これを防ぐには低温フレームを用いたり、よりイオン化しやすい元素を多量に共存させて抑制することができます。たとえばカルシウムやストロンチウムの定量の場合、カリウムの添加が効果的です。また、フレーム中で燃焼生成物と測定元素の間の化合物生成や、共存成分と測定元素との間に難解離性化合物が生成する場合には、遊離原子の割合が減少します。後者の場合には、妨害となる共存成分を分離することが最も良い方法ですが、妨害成分をさらに加えて影響を一定にしたり、標準添加法によって、定量する事が行われています。また、マグネシウム定量の際のアルミニウムやケイ素の妨害にはストロンチウムの添加、カルシウム定量の際のリン酸イオンの妨害には、ストロンチウム、ランタン、EDTAの添加などが効果的です。フッ素イオンはジルコニウム、チタン、タンタルなどの測定に増感効果を示します。
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