発光分光分析装置は、光源、分光器、検出器、それにデータ処理装置から構成されます。
図5・2 発光分光分析装置の基本構成
発光スペクトル線の数は元素により数千本以上あるものもあり、これを分解するためには高い分散を持った分光器が必要です。通常、発光分光分析に用いられる分光器では、出口スリット位置における波長分散(これを逆線分散といいます)、0.2〜1nm/mmのものが多いようです。スリット幅を30μmとすれは、スペクトルバンド幅は0.006〜0.03nmということになります。吸光光度法や原子吸光法で用いられる分光器のスペクトルバンド幅が0.5〜3nmであることを考えれば、約10倍分散が大きいことになります。
回折格子分光器の逆線分散
(nm/mm)は次式で求めることができます。
  (5・3)
ここで
は回折角、つまり回折格子の法線と回折光とのなす角、
はスペクトルの次数、
は分光器の焦点距離(mm)、
は回折格子の1mm当りの刻線数です。通常 は90°に近いので
とおき、1次のスペクトルを使うとすれは
であるから、式(1)は簡単に、
  (5・4)
となります。焦点1mの分光器で、1000本の回折格子を使うと逆線分散は1.0nm/mm、2000本/mmの回折格子では0.5nm/mmということになります。分散を大きくするため2次または3次のスペクトルを使うこともありますが、この場合には他の次数のスペクトル線の干渉にも注意する必要があります。例えは2次の210nmのスペクトル線には1次の420nmの線が重なります。
エシェル回折格子分光器は、数10本/mmという少ない刻線数の回折格子を使い、その代わり100次あるいはそれ以上の高次のスペクトルを利用することによって、高い分散が得られるようにしたものです。この場合には、異なる次数のスペクトルとの重なりを防ぐために、回折格子のほかにプリズムを内蔵させて回折格子の分散方向と直角方向にも分散させるという方式や、前置モノクロメーターを使うという方式が用いられています。
発光分光分析では通常紫外部から可視郎にかけてのスペクトル線が測定されますが、りん、ひ素、いおうなど、波長が200nm以下に強いスペクトル線を持つ元素の測定では、この光が空気中の酸素により吸収されるという問題があります。このため、分光器の内部を真空にしたり、内部および光源から入口スリットまでの光の通路をアルゴンや窒素ガスで置換したりして使う場合もあります。真空にすることのできる分光器を真空分光器といいます。