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環境計測のための機器分析法 茶山健二
7章 クロマトグラフィー 流れで分離する
7-2  クロマトグラフィーの分類
 クロマトグラフ系は互いに混り合わない移動相(mobile phase)と固定相(stationary phase)の二つの相から成り立っています。試料中の成分が固定相と、その間隙をぬって流れる移動相に異なる割合で分配されると、成分ごとに固定相中を移動する速度に差が生じて分離されます。このような原理に基づく分離法をクロマトグラフィーといいます。現在までに知られているクロマトグラフィーでは、移動相には気体または液体が、固定相には液体または固体が用いられており、移動相に気体を用いるガスクロマトグラフィーと、移動相に液体を用いる液体クロマトグラフィーに大別することができます。さらに、固定相が液体か固体かによって、ガスクロマトグラフィーは気-液クロマトグラフィーと気-固クロマトグラフィーに、液体クロマトグラフィーは液-液クロマトグラフィーと液-固クロマトグラフィーに分類されます。

 また、試料成分の移動相と固定相への分配機構、すなわち分離機構が何に基づいているかにより、クロマトグラフィーを分類することもできます。分離機構は用いる固定相の種類により異なり、たとえば固定相に液体を用いると、試料成分は固定相液体への溶解性の差により分離されます。このような分離機構に基づくクロマトグラフィーを分配クロマトグラフィーといいます。固定相に吸着剤、イオン交換体、ゲルを用いると、それぞれ吸着力の差、イオン交換能の差、ゲル細孔への浸透性の差により試料成分が分離されます。これらをそれぞれ吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーといい、上述の分配クロマトグラフィーと同様によく用いられています。しかし、二つ以上の機構が同時に作用している場合もしばしば見受けられます。さらに、固定相を形式上から分類すると、ろ紙を固定相の保持体とするペーパークロマトグラフィー、ガラスやプラスチック平板上に固定相を薄層状に展着した薄層クロマトグラフィー、固定相をクロマト管に柱状に充てんしたカラムクロマトグラフィーに分類できます。今日の主流であるガスクロマトグラフィーと高速液体クロマトグラフィーは形式上、カラムクロマトグラフィーに属していて、これらを中心に概説します。
表7・1 クロマトグラフィーの分類
分類基準クロマトグラフィー
移動相の種類ガスクロマトグラフィー(gas chromatography, GC)
気-液クロマトグラフィー(gas-liquid chromatography,GLC)
気-固クロマトグラフィー(gas-solid chromatography, GSC)
液体クロマトグラフィー(liquid chromatography, LC)
液-液クロマトグラフィー(1iquid-liquid chromatography, LLC)
液-固クロマトグラフィー(1iquid-solid chromatography, LSC)
分離機構(固定相の種類)分配クロマトグラフィー(partition chromatography)
吸着クロマトグラフィー(adsorption chromatography)
イオン交換クロマトグラフィー(ion exchange chromatography)
ゲルクロマトグラフィー(gel chromatography)
固定相の形式ペーパークロマトグラフィー(paper chromatography)
薄層クロマトグラフィー(thin-layer chromatography)
カラムクロマトグラフィー(column chromatography)
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