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環境計測のための機器分析法 茶山健二
7章 クロマトグラフィー 流れで分離する
7-8  GC:応用
GCにおける分離や検出感度の向上あるいは分析対象物の拡大などのために、次に列挙するような手法が用いられています。
昇温ガスクロマトグラフィー
 カラム温度は保持時間に大きな影響を与えるので注意深くコントロールしなければなりません。GCではカラム温度を一定に保つ定温分析と、カラム温度を昇温させる昇温分析とがあります。沸点が広い範囲に分布している試料混合物を定温分析すると、低沸点成分のピークは鋭いが、高沸点成分のピークは幅広くて保持時間が長くなります。低沸点成分の分離に適したカラム温度では高沸点成分は極端な場合には溶出しません。逆に、高沸点成分に適したカラム温度では低沸点成分の分離が不十分となります。このような場合、昇温分析すれば各成分ピークは同じような形状で、短時間に分離できます(図7・13)。試料に適した昇温プログラムを設定し、このプログラムに従ってカラム温度は昇温されます。
図7・13 (a)定温ガスクロマトグラムと(b)昇温ガスクロマトグラムの比較
誘導体化ガスクロマトグラフィー
 GCは揮発性の乏しい物質や不揮発性物質ではそのまま直接分析することはできず、適当な揮発性物質に変換してGC分析する誘導体化が行われています。この誘導体化反応の際に、特定の検出器に高感度に応答する部位を導入すれば高感度分析が可能となります。ECDに対して、このような目的の誘導体化がよく用いられています。
 ところで、ガスクロマトグラフ系内で反応させる場合を反応ガスクロマトグラフィーといい、特定成分の消去、熱分解をはじめ種々の反応が使用されています。このような手法により、GC適用範囲の拡大や高感度分析への応用がなされいます。
表7・7 誘導体化反応の例
誘導体化反応適用例
シリル化アルコール、カルボン酸、チオール、アミン
エステル化カルボン酸
アシル化アルコール、チオール、アミン
エーテル化アルコール
キレート化金属イオン
ガスクロマトグラフィ−質量分析法
 ガスクロマトグラフは成分の分離には優れた威力を発揮するが、成分の構造に関する情報には乏しいです。一方、質量分析計は微量の試料量で構造に関する有力な情報を与えてくれますが、混合物の試料では解析できません。両者を結合すれば互いの長所を効果的に発揮できるようになり、非常に強力な分析手法となります。ただし、ガスクロマトグラフからの溶出成分をキャリヤーガスと分離するためのセパレーターを通してから質量分析計に導入されます。
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