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modern american economy
5-3. 経済の変化とIT投資
担当:甲南大学 稲田義久


 激烈な競争はIT投資の急拡大をもたらしました。下の図は民間企業設備投資とGDPの関係を見たものです。アメリカの民間企業設備投資は構築物と機械設備・ソフトウェアの投資からなります。図では構築物を除いた機械設備・ソフトウェア投資の推移(棒グラフ)を描いています。アメリカ経済において、実質の機械設備・ソフトウェア投資額(96年価格表示)は87年の3600億ドルから2000年には1兆560億ドルにまで増加しています。次の2つの折れ線グラフは機械設備・ソフトウェア投資と情報処理設備・ソフトウェア投資の対GDP比をみたものです。民間企業設備投資から構築物への投資を除いた機械設備・ソフトウェア投資の対GDP比は87年の5.9%から2000年には11.5%へと5.6ポイント上昇します。90年代後半に投資が急拡大していることがわかります。また本来のIT関連投資がある情報処理設備・ソフトウェア投資の対GDP比は同期間で1.7%から6.3%まで急拡大します。この図からアメリカの民間企業設備投資の拡大はじつはIT投資に牽引されていたことが理解できるでしょう。

図5-3 企業設備投資とソフトウェア投資
図5-3 企業設備投資とソフトウェア投資
出所:Department of Commerce

 このことは下表から明確に確認できます。アメリカの実質機械設備・ソフトウェア投資はクリントン大統領の時期に二桁を超える伸びを示します。この実質機械設備・ソフトウェア投資の伸びをIT関連投資と非IT関連投資に分けて成長貢献度を見ましょう。IT関連投資は、93年には実質機械設備・ソフトウェア投資の伸びに対して41.0%の貢献ですが、2000年にはそれが93.8%まで上昇しています。この時代、設備投資といえばほとんどがIT関連投資であったといっても過言ではないでしょう。

表5-4 機械設備とソフトウェア投資の伸びとIT関連投資の貢献
    1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
機械設備とソフトウェア   7.5 7.0 0.4 -2.0 7.4 11.3 11.9 11.5 11.0 13.3 14.6 11.5 8.2 -6.4 -1.7
IT関連   3.1 3.8 1.2 1.5 5.0 4.6 4.8 6.6 7.3 9.3 10.4 9.0 7.7 -3.3 1.5
非IT関連   4.3 3.2 -0.8 -3.6 2.5 6.7 7.1 4.9 3.7 4.0 4.2 2.5 0.5 -3.1 -3.2
ITの寄与率(%)   42.0 55.0 312.2 -74.4 67.0 41.0 40.2 57.6 66.6 69.7 71.4 78.5 93.8 51.3 -85.8
  1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
民間企業設備投資 9.4 9.5 9.7 9.6 9.1 9.2 9.7 10.1 10.8 11.5 12.4 13.3 13.9 14.4 13.6 12.5
機械設備とソフトウェア 5.9 6.1 6.3 6.2 6.1 6.4 6.9 7.4 8.1 8.6 9.4 10.3 11.0 11.5 10.7 10.3
情報処理設備とソフトウェア 1.7 1.8 2.0 2.0 2.1 2.4 2.6 2.8 3.2 3.7 4.3 5.0 5.7 6.3 6.0 6.0
コンピュータ関連投資 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.3 0.4 0.4 0.7 0.9 1.7 2.3 2.7 2.6 3.0
ソフトウェア 0.5 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 0.9 1.0 1.1 1.2 1.5 1.7 1.9 2.0 2.0 2.0
その他 1.3 1.3 1.3 1.3 1.3 1.3 1.4 1.4 1.5 1.6 1.6 1.7 1.8 2.0 1.8 1.7
出所:Department of Commerceのデータから計算 単位:%

 1990年代の民間企業設備投資の増加は、経済全体、特に、IT生産業におけるR&D(研究開発)投資の急増という別の側面もあわせもっています。94年から2000年にかけてのR&D投資の伸びは年平均6%でしたが、88-94年の平均伸びは0.3%に過ぎなかったのです。90年代後半の伸びはいかに爆発的か理解していただけるでしょう。

 最後に、IT需要を評価するうえで注意すべきことがあります。ここでは情報処理機器・ソフトウェアへの支出は実は投資支出しか考慮していない点です。中間財・サービスに対する企業の支出は言うに及ばず、消費支出、政府支出、国際貿易は含まれていないのです。これらを含めれば、その広がりはさらに大きなものなることが理解していただけるでしょう。

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