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modern asian economy
1-1. アジア通貨危機による経済ダメージ
担当:甲南大学 高龍秀<コ・ヨンス>


 アジアでは、アジアNIESと呼ばれる、韓国、台湾、香港、シンガポールが1960年代後半から工業製品の輸出を急増させ、高度成長を実現してきました。その後に、ASEAN(東南アジア諸国連合)のタイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアなどが成長率を高めてきました。特に、1985年のプラザ合意の後に、急速な円高が起こったため、日本企業のASEANなどへの急速な投資ラッシュが起こり、80年代後半より台湾・韓国企業もASEANへの投資を増大させ、ASEAN地域は高い成長を達成します。また、1990年代には、中国が高度成長を実現させ、東アジア諸国の多くの経済が躍動的に成長してきたため、「21世紀はアジアの時代」とか「アジアは世界の成長センター」という評価も与えられてきました。


<図1>アジア諸国のGDP成長率
<図1>アジア諸国のGDP成長率


 <図1>に示したように、主要なアジア諸国は、1995年まで高い成長を遂げましたが、1997年に突如として通貨危機に陥りました。97年7月にタイの通貨が暴落を始めると、またたく間に周辺のマレーシア、フィリピン、インドネシアでも通貨暴落が起こり、年末には韓国でも通貨危機が発生しました。<図1>に示したように、これらアジア諸国では97年に成長率が低下し、98年には大幅なマイナス成長に苦しむようになりました。これらの国では通貨が暴落したため、多くの金融機関と企業が破たんし、金融危機・経済危機にまで波及したといえます。

 「世界の成長センター」と評価されたアジア諸国でなぜ、通貨危機・経済危機が起こったのでしょうか。通貨危機の後に、アジア諸国の経済はどのように回復したのでしょうか。日本は危機に陥ったアジアにどのような協力を行ったのでしょうか。これらの問題を考えていきたいと思います。

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