modern asian economy
2-1. 1997年11月:韓国の通貨危機は日本の金融危機と連動して悪化
担当:甲南大学 高龍秀<コ・ヨンス>
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11月3日 日本で三洋証券が破たんし、コール市場(短期金融市場:無担保翌日物)で戦後初めてデフォルト(債務不履行)が発生しました。
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日本自身が金融危機に陥ったため、日本の金融機関は、満期がきた韓国向け融資について、韓国側が融資の延長を要請しても(短期融資の借り換え=ロール・オーバー)、それに応じない比率が上昇しました。
・日本の金融機関が最も多く韓国から資金を回収しました。
⇒<表1>に示したように、日本の金融機関は、1997年の1年間で131億ドルの融資を回収し、融資残高を減らしています。
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韓国の銀行はドル債務の返済に追われ、為替市場でのウォン売り、ドル買いに走りました。
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さらにS&P、ムーディーズなどの格付け機関が韓国の格付けを引き下げました。 |
<表1>韓国主要銀行の外貨債務残高の構成(単位:億ドル) |
| 1996末 | 1997末 | 増減 |
1.短期負債 | 629.7 | 253.9 | -375.8 |
(1)海外金融機関融資 | 555.6 | 247.4 | -308.2 |
−日本系 | 218.8 | 88.0 | -130.8 |
−米国系 | 56.7 | 34.9 | -21.8 |
−欧州系 | 173.0 | 96.1 | -76.9 |
−その他 | 107.1 | 28.4 | -78.7 |
(2)CP | 74.1 | 6.5 | -67.6 |
2.長期負債 | 315.9 | 375.4 | 59.4 |
3.合計 | 945.6 | 629.3 | -316.4 |
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(注)7都市銀行+6特殊銀行を対象とし,海外店舗,オフショア勘定を含む。
(出所)高龍秀『韓国の経済システム』東洋経済新報社、14ページ。
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日本など先進国の金融機関が韓国への返済圧力を強めたため、韓国の金融機関はデフォルトの危機に陥りました。韓国の中央銀行は、デフォルトを防ぐ緊急措置として、ドルの返済が不可能になった韓国の民間金融機関に外貨準備のドルを融資しました。
<図5>のように1997年末までに中央銀行は、ドルの返済が不可能になった民間金融機関に233億ドルの緊急融資をしました。中央銀行は、この民間金融機関へのドル緊急支援と、為替市場介入により外貨準備を使い果たし、外貨準備は12月18日の大統領選挙(金大中氏が当選)の日、39億4千万ドルと史上最低になり、国家デフォルトの危機に至りました。

<図5>韓国銀行(中央銀行)の民間銀行への緊急外貨支援(残高)