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modern asian economy
2-3. 1997年アジア通貨危機の原因は?:クローニー資本主義論と過剰な資本移動論
担当:甲南大学 高龍秀<コ・ヨンス>


(1) アジア危機直後、IMFや欧米の研究者はクローニー資本主義を危機の原因と指摘した。
「アジアはクローニー資本主義(縁故となれ合い・ゆ着の経済)だから危機に陥った」
これは"Asian Way" "Asian Value" 「アジア的価値観」に対する欧米の批判という側面もあります。

さらにこの主張は、借り手責任論=多額の融資を借入れたアジアの側に問題がある、という主張です。
⇒「コンディショナリティにより、問題の多いアジア経済を正しく改革」という意味で、コンディショナリティ(金融引締め=高金利、財政緊縮)を正当化する役割を果たしました。

⇒しかし、コンディショナリティは企業破たんを拡大する副作用もありました。
これに対し、マハティール(マレーシアの首相)は痛烈に欧米金融機関を批判しました。
「アジア経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)はそれほど問題がなかったのに、ヘッジ・ファンドなど欧米の投機資本によりアジアは危機に陥った」

(2) 98年に危機がロシア・中南米に伝染し、グローバル・マネーの暴走が問題との主張が浮上しました。
(<図2>のブラジル・ロシアの為替レート暴落を参照してください)
・ロシア危機で、米ヘッジ・ファンドのLTCMが破たん ⇒NY連邦準備銀行が救済。
=アジアが好況と見るや多額の資本が流入し、危機になるや瞬時に大規模に流出する、過剰な資本の流出入が問題との指摘が説得力を持つようになりました。
言いかえると、国際金融市場の不安定性がアジア危機の原因として重要だという考えです。
さらに、1990年代にアジアが早すぎる「資本取引の自由化」を進めたことがその背景にあるとも指摘されました。
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