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modern chinese economy
10-1. 地域格差、都市・農村格差
担当:甲南大学 青木浩治 藤川清史


 中国を見る一つのポイントは、時間軸とともに「地域」という空間軸を持つことです。一口に中国と言っても、13億近い人口が日本の25倍の国土に暮らしているお国柄だからです。また、「都市と農村」という側面も毛の時代から強く意識されてきました。このように中国の格差を問題にする場合、最低限この二つの空間軸を持っておくことが必要です。

 図10-1は中国の地域別、都市・農村別世帯一人当たり所得の推移を見たものです。ただし、所得捕捉が不十分ですので、図の計数は不完全と考えておくべきです。しかし、それでもおおよそのことはこれでも分かります。図を観察すると、次の諸点が見えてくるのではないでしょうか。

図10-1 都市・農村世帯一人当たり実質所得(1978年価格)
図10-1 都市・農村世帯一人当たり実質所得(1978年価格)
注)
都市世帯は可支配収入、農村世帯は純収入(80年代前半は一部推計値)。実質化は都市・農村別消費者物価指数による。

資料)
国家統計局国民経済総合統計司編「新中国五十年統計資料匯編」1999年、国家統計局編「中国統計年鑑」2000・2002年。

(1)中国では地域格差とともに、都市・農村格差が著しい。80年代前半では農業・農村改革によって都市・農村格差は縮小したが、80年代後半から拡大に転じている。
(2)農村内部格差が一貫して拡大基調にあり、特に西部農村部の所得改善が遅々としている。
(3)改革・開放当初における都市間格差は驚くほど小さかったが(その主要因は全国一律の賃金制度です)、80年代後半から次第に開き始め、90年代にそれが加速化した感がある。特に、ここ数年における実質所得の上昇は東部都市部、なかでも北京・上海・広州といった主要都市に集中している。
(4)それに対して農村部の実質所得改善テンポは、ここ数年大きく鈍化している。

このように、現在の中国の繁栄は東部沿海部の都市、およびその郊外に集中しているようなのです。

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