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modern chinese economy
12-2. 増値税の還付率調整
担当:甲南大学 青木浩治 藤川清史


 このように中国の対米ドル人民元レートはほとんど変動しない仕組みとなっています。しかし、例えば輸出低迷期において中国政府が文字通りなにもしないと言えば嘘になるでしょう。なかでも1994年に創設された増値税(日本の消費税)が適宜調整されており、実質的に為替レート調整と似たような働きをしてきました。

 中国の増値税率は17%であり、日本の5%に比べてかなり高率ですが、一般に製品を輸出する場合には100%還付することが基本原則です。そうしないと輸入国で課される消費税に加えて二重課税となるからです。しかし中国では財源不足その他により必ずしも100%増値税を還付していませんでした。例えば表12-1は中国の増値税還付率の推移を品目別に見たものです。ここで表の計数は本来の増値税率17%のうち 何%が実際に還付されているかを表しています(還付率が17%となったとき100%還付が行われたと考えて下さい)。明らかに為替レートが8.27-28元/ドルという狭い変動幅に制限された1998年において還付率が急速に高まっています。同年は輸出が大幅に鈍化した年だったからです。このように中国では為替レート調整はほとんど行われることはありませんが、同等の効果を持つ隠れた政策調整が頻繁に行われています(その他の例は貿易権の拡大です)。

表12-1 主要品目の増値税還付率の推移
単位 : %
  1996年1月 1998年1月 1998年6月 1998年7月 1999年1月 1999年7月
機械設備・電気電子製品等 9     11 13-17 15-17
繊維原料・同製品 9       13 15-17
時計・靴・陶磁器等 9 11   11 13 15
玩具・スポーツ用品・
プラスチック製品・旅行用品
9       13 15
石炭 3   9     13
鋼材・セメント 9   11   13 15
船舶 9   14     15
原料化学品・塗料・染料・顔料 9       11 15
その他製品 6       9 13
農産物 3       5 5
注)表の計数は、17%の増値税率のうち還付された税率の大きさを表す。
資料)今井理之「中国の貿易と人民元レート」青木健・馬田啓一編著「ポスト通貨危機の経済学」勁草書房、2000年、第10章、199-218ページ所収の表10-3(213ページ)を一部簡略化。

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