借入による資本調達 金融機関論

 株式会社の資本調達の方法は非常に多様ですが、1970年代までは銀行借入が圧倒的に大きな比重を占めてきました。

 このことの背景には、次の点があげられます。
  1. 戦後の復興期、わが国の経済の復興のために、政府が銀行貸し出しを中心とする間接金融中心に復興資金を企業に供給する諸策を取った
  2. 戦後の復興期、まだ証券投資をするほどのまとまった資金を各個人が所有しておらず、個人の貯蓄の多くは銀行預金の形だった(=個人資産の未成熟と高い貯蓄比率)
  3. 高度成長期、企業は投資のために豊富な資金需要があったが、内部資金によってそれをまかなうことができず、外部資金に頼らざるをえなかった
  4. 高度成長期、各種証券の発行市場が未整備だったため、実質的に利用できる資金源泉は銀行借入に限られていた。当時、普通社債の発行にあたっては有担保原則などの厳しい制約があり、株式の公募時価発行についての市場のルールができたのは、1970年代に入ってからだったことなどが、一例

 銀行借入中心の資本調達を続けてきた結果、銀行と企業との関係はメインバンク制 メインバンク]と呼ばれる、資金の貸し手と借り手の単なる関係を越えた密接な関係が構築されることになりました。

 しかし1970年代以降、各種の証券の発行市場が整備されたり、その後のバブル時代の株高、資本調達の国際化などを経て、現在は従来ほど銀行借入一辺倒という状況ではなくなってきています エクィティ・ファイナンス]。
(馬場 大治)