業績悪化のメカニズム 管理会計

 企業の業績は絶えず景気変動の波にさらされています。景気変動の原因は、経済学的な観点から明らかにされていますが、企業会計の側面からいえば、次のように説明されます。



 好況期には売上増加に伴って企業収益が伸びる一方、旺盛な需要に対応するため積極的に設備投資が行われます。投資のための資金は株式などを発行して調達する(=エクィティ・ファイナンス、[ エクィティ・ファイナンス])か、銀行等からの借入によるかのいずれかです。投資する限り、投資プロジェクトによってもたらされる将来収益の現在価値の総和が、配当や利息といった資金調達コストを含めた投資総額を上回ることが見込まれているはずです。ところが、オイルショックや戦争などいろいろな外的要因によって、物価の高騰や為替レートの変動が激しくなると、消費の動向もそれにつれて大きく変化するため、企業の投資プロジェクトの基礎となっていた前提や価格も大きく変わってしまいます。その結果、当初は有望とみられた投資プロジェクトも、まったく採算に合わなくなってしまう可能性が出てきます。投資により供給が増加する一方で売上が減少することから、企業は大量の在庫を抱えることになり、在庫コストが上昇します。一方、投資額の増加で借入金の利息など資金コストは高くなりますから、結果として、企業収益は大きく圧迫されてしまいます。また当然、それは企業のフリーキャッシュ・フローの減少を導きますから、企業の資金繰りも困難になってきます。これらが連鎖的に起きて、企業の業績が次第に悪化していくことになるのです。

(伊豫田 隆俊)