社債による資本調達 経営財務論

 負債資本調達 資本調達形態]の中で、銀行借入 借入による資本調達]は銀行という仲介機関を利用し、間接的に資本調達するのに対して、社債発行は社債という証券を発行し、資本市場から直接的に多数の投資家を対象として資本調達する方法です。社債は他人資本ですから企業経営に対する参加権は付与されておらず、固定的な利子の支払いと償還時において元本を償還する契約がある点で株式とは違います。従来、社債発行には非常に厳しい規制がありましたが、近年の規制緩和で上場企業はそれぞれの信用状態に応じて自由に発行できるようになっています。

 わが国企業が一般的に発行している社債は一般的な普通社債の他、以下の2種類の特殊な社債があります。

(1) 転換社債(CB)
社債保有者があらかじめ決められた期間内に、あらかじめ決められた条件で保有する社債を株式へと転換する選択権を与えられている社債。転換価格以上に株価が上昇している時に転換権を行使し、社債権者は利益を得られる。例えば額面100円で、転換価格400円の転換社債の所有者は、株価が500円の時に転換権を行使すると次のような形で利益を得られる。この社債1枚あたり100/400=0.25株の株式に転換する権利が付与されているので、100円で500円の株式を0.25株、つまり、\500×0.25=\125の株式を取得できる。

(2) 新株引受権付社債(WB
社債保有者があらかじめ決められた期間内に、あらかじめ決められた条件で発行会社の新株を購入する権利(=新株引受権、ワラント)を付与されている社債。決められた条件以上に株価が上昇している時に権利を行使するとこの社債の保有者は時価よりも安くで株式を購入でき、その分の利得を得られる。

 2つの社債は半ば株式と同様の特徴を備えた社債であるため、ハイブリッド証券と呼ばれます。このような社債を発行する企業のメリットは、転換権や新株引受権がおまけとして付与されているため、その分利子率をより低くして、社債を発行することが可能になります。第2のメリットとして、転換社債に関しては、転換権が行使されることにより償還の必要がなくなること。新株引受権付社債に関しては、新株引受権が行使され新株が発行される時にその払い込み分だけ新たな資金調達ができることがあげられます。

(馬場 大治)