純粋持株会社 経営管理論


 自らは事業を行わず、株式の保有を通じて子会社企業の経営を支配する会社を純粋持株会社といいます。このような企業は、独占禁止法で設立が禁止されていましたが、1997年の改正で半世紀ぶりに解禁されました。

 戦前の純粋持株会社は、財閥ファミリーがより少額の出資で、傘下にできるだけ多くの企業を持つための仕組みとして利用されていました。戦後改革の際に、経済力の過度の集中を排除する目的で禁止されました。

 97年の持株会社解禁は、戦前の財閥支配を復活させようという趣旨ではなく、企業が各事業部を子会社化し、本社を持株会社にしたような、組織構造を採用することを可能にする趣旨で、新しい組織構造をつくり出そうというものです。

 持株会社化した組織構造をとることについて、次のようなメリットがあると、一般に主張されています。職能的組織・事業部制組織 職能的組織・事業部制組織]で説明しているように、事業部制組織は各事業部にある事業を運営するために必要な職能を備え、事業部をあたかも一つの会社であるかのうように自律的に運営できることが、各種のメリットの源泉となっていた組織構造でした。ところが、純粋持株会社化することで、それぞれの事業部は「あたかも一つの会社」どころが、独立した本当の会社になるわけですから事業部制の各種のメリットをより強く受けることが可能になるはずです。また、純粋持株会社化することで、不要な部門の売却や必要な部門の買収といった機動的な資源展開がたやすくなります。例えば、ある不要な部門を売却するには、単に保有する子会社の株式を売却するだけでよいことになります。また、他企業を買収しても単に子会社の一つに加えるだけでよく、買収や合併後の2つの会社を1つにするための組織統合の問題を回避することができます。

(馬場 大治)