社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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1-1 質問紙調査の企画・設計
1-1-4 標本抽出(サンプリング)の種類


サンプリングはなぜ必要?
1.母集団とサンプルとは?
母集団 われわれがアンケートによって、その行動、意識などの実態を、知りたい対象(たとえば、全国の有権者(ex.8千万人)、X市の全住民(ex.10万人)、Y大学生全員(ex.1万人など)のこと
サンプル 母集団から、ある方法で抽出されたわれわれの調査対象(ex.5百人)のこと
われわれは、以下に述べるような理由で、母集団調査にくらべて、サンプル(標本)調査が望ましいため、通常はサンプルを抽出して、それを対象に「質問紙調査」を行う。
2.どうしてサンプル(標本)調査がすぐれているの?
 以下の点ですぐれている(参考文献1. 104〜111頁参照)
  1. 1]費用 2]時間 3]調査員の数 など、調査実施上、母集団調査はほとんど不可能に近い。その点、500〜1000のサンプルに対しては、実際の調査が容易である。
  2. 数が少ないことで、調査そのものを正確、迅速に行うことが可能。時間が勝負の「選挙投票行動調査」などではとくに、このことが要求される。
  3. 母集団調査では、出てくる大量の「調査不能」「調査拒否」により、調査集団が、対象集団(母集団)からどれだけずれているかを判断できない。それに対して、サンプル(標本)の「代表性」が保証されていれば(後に述べるランダム性)、標本誤差を見積もっても、十分「母集団」について判断が可能になる。
3.そんな少ない数(標本数)で、大丈夫なの?
 ここでは、強力な武器として、「ランダムサンプル」(すべての個体が等確率で抽出されることが保証される方法)がある。このことにより、サンプルの「代表性」が保証されるのである。すなわち、性別、年齢、職業、さらには「調査者の好み」などなどの偏りがない「サンプル」(つまり、母集団を代表するサンプル)が抽出される必要がある。
 したがって、サンプルの「ランダム性」が保証されれば、大丈夫なのである。
4.でも「標本誤差」はどうするの?
 母集団Nから標本nをランダムに抽出するばあい、その抽出回数は回という莫大な数になる。=N!/n!(N−n)!であるから、たとえば、10人から4人のランダムサンプルを抽出するばあいでも、120個のサンプルが抽出されることになる。N,nが大きいと、考えられないくらいに莫大なサンプルが抽出可能であることになる。
 実際には、その1つをランダムサンプルとして選ぶのである。当然、「標本誤差」が存在することは明白である。ただ、この「標本誤差」は「統計学的に」計算可能であり、このことがランダムサンプル調査の優れている点である。
 結局、標本誤差を考慮すると、母集団がいくら大きくても、ランダムサンプルを300〜500ぐらいとれば十分であるということが導き出される(参考文献1. 120〜124頁)。

ランダム・サンプリングの方法
  • 単純無作為抽出法
     母集団に1から番号をつけたとして、必要な標本の数だけ乱数表を引くとか、サイコロを振るなどして、その都度抽出する方法。ランダム性が保証されるもっとも基本的な抽出法である。
  • 等間隔抽出法(系統抽出法)
     母集団、標本の数が多い場合、無作為抽出法のように、標本数の数だけ乱数表を引くのは大変なので、スタート番号だけ乱数表で決め、それ以降を等間隔で抽出する方法。一般に、この方法が用いられることが多いが、抽出元のデータの並びが一定の規則性を持っている場合などは抽出後の標本と母集団の状態の乖離が大きくなることがあるので注意を要する。
  • 多段抽出法
     無作為抽出で全国調査などを実施する場合、抽出された標本は広範囲でバラバラになる。実作業では、これらをひとつひとつ調査するのは膨大なコストがかかる。こうした場合、まず、第1段目にどの市町村を選択するかを抽出し、第2段目にそのエリアから個人をサンプリングする方法で、実査上、いろんな点ですぐれている。(抽出を複数段階繰り返す方法)
  • 層化抽出法
     すでにわかっている母集団の状況(例えば、男女比、年齢比など)にあわせてサンプリングする。母集団の男女比が3対7であれば、サンプルも同じ比率に合わせて抽出する。
  • Cf. 層化多段抽出法
     多段抽出法と層化抽出法を組み合わせたもの。例えば、全国調査の場合、市区町村の人口規模別に各市区町村から抽出する標本数を確定し(層化抽出)、その上で、どの市区町村を選ぶか、個人を選ぶかという作業を行う(多段抽出)。
     ここで注意すべきことは、最終的には個人が調査の対象になるので、最終の個人レベルで、「すべての個人が等確率で選ばれる」ことが保証されていなければならない。

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