社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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2-1 面接法とは何だろうか
2-1-2 面接法の種類


 社会調査における面接法といえば、ふつう自由面接法を第一に思い浮かべる。それほどに自由面接法は、面接調査の中心であるといってよい。そして自由面接法は、また質的調査の代表例でもある。しかし質的調査が面接調査であって、量的調査がアンケート調査であるとして単純に理解してしまうと大きな誤りである。たとえば、形式的面接法(あるいは調査者または調査員による他計式質問紙調査)は、面接法の一つではあるが、調査票(形式的な質問票)を用いたうえで直接的な面接をとおして実施される量的調査を目指した面接法であり、それ自体は量的調査に分類される。
 面接法は、ふつう指示的面接法と非指示的面接法とに大きく二つに区分される。このほかに先ほどのようにアンケート調査法と同じ形式化された調査票を用いての面接法であるか否かで、形式的面接法と非形式的面接法とに大きく二つに区分される。形式的面接法は、基本的には指示的面接法を意味しており、非形式的面接法あるいは非指示的面接法の方は、一般的に自由面接法と呼ばれている。先ほど述べたように社会調査では、面接法といえば、この自由面接法を指している場合が多いということになる。

形式的面接法
 形式的面接法とは、調査者(または調査員)が直接、被調査者を訪問し、質問をしながら回答を書き取っていく他計式(被調査者が自分では記入しない)の調査法である。この方法は、量的調査に分類されるが、面接法に基づくという点で、(1)調査対象者がサンプルとして抽出された本人(被調査者)であることを確認したうえで調査ができる点や、(2)質問の意味についても提示用カード(選択肢のみを別刷りにしたカードや図表など)を用いることによって誤解されることなく確実に伝達できる点や、(3)得られた回答に見られる明らかな虚偽性がチェックできる点など、多くの点で自計式の調査法(郵送によるアンケート調査法など)よりも優れており、データとして得られる回答の精度を確保できるといってよい。
 また直接訪問して調査を実施するため、郵送調査や留置調査(お願いしておいて後から調査員が調査票を直接回収する方法)よりも回答への動機づけは強く、比較的高い回収率が期待できる。とはいえ一定水準の回収率を達成するためには、回答拒否や不在などの場合、何度も訪問をしなければならない。もしそれをしないと、回収率が低くなるだけでなく、一定の特徴を有した、あるいは行動上の傾向をもった一部の集団だけがサンプルから抜け落ちてしまうことになり、偏りが生じる危険性もある。
 面接調査の最大の弱点は、個票についての高い信頼性と高い回収率を得るためにひじょうに大きなコストを伴うということである。また調査員の属性(男女、年齢など)、人格、態度などの違いによって、回答に偏りが生じる危険性もありうる。調査員を大量に動員するとなれば、なかには調査員自らが不正記入し、個票を捏造する、いわゆる「メイキング」をする者も出てくる可能性もある。事前の調査員説明会(インストラクション)で十分に理解させて予防したり、調査票回収後に無作為抽出して回答者に確認の電話をするなどの措置を取ることも必要になる。しかし完全なチェックは容易いことではない。
 このような弱点はあるが、面接調査における回答の信頼性の高さ、サンプルを確実に把握できる点などから言って、経験的には多くの場合に70%前後の回収率は、期待できる。これらのことから考えて、その他の調査法より優れているため、十分な資金が確保できるのであれば、もっとも望ましい社会調査の実施方法であるといってよい。
 この形式的面接法で用いられる調査票の作成については、基本的にはアンケート調査法における調査票の作成と同じ手順で作成される。したがって、調査票の作成については、アンケート調査法における調査票作成の手順を参考にしてほしい。
 面接法のうちの指示的面接法は、調査者あるいはその代理としての調査員が調査対象者に直接面接し、口頭で質問をし、その回答を得るという調査法であって、形式的面接法の調査と同じである。いわゆる形式化された調査票を用いての面接法であって、量的調査での一般的な面接法である。ときに訪問面接調査などと呼ばれることもある。質問の仕方や回答内容の記録の仕かたまでもが厳格に定められており、調査者(あるいはその代理としての調査員)は文章を変更したり、質問文に説明を加えたりすることは、基本的には認められてはいない。
 つまり調査員は、調査票に記載されている一連の質問文を文字どおり読みあげ、調査対象者にあらかじめ用意された選択肢のなかから選んでもらう形式になっている。この方法は調査員の感情やその人格、あるいは調査技能の巧拙や調査経験の多寡など、調査活動に与えるバイヤス要因をある程度回避することができるというメリットがある。このことからも多くの調査員を動員しなければならない大規模な量的調査に適している。また調査票においては、調査事象に関して回答者の意識には共通の、定まった構造(あるいは展開のパターン)もしくは統制の力が働いていると仮定して一連の質問文が設計されているので、形式的面接法は、場合によって構造化面接法と呼ばれたりすることもある。

自由面接法
 自由面接法、すなわちインタビュー法とは、簡単な質問項目のメモ(チェック・リスト)にしたがって、どちらかというと自由に質問し、それにたいする被調査者(回答者)から多様な回答を聴き取っていく調査であり、回答の形式や順序、選択肢などを調査者が指示しないという点で、形式的面接法によるアンケート(質問票)調査とは本質的に異なっている。特定の指示などを与えないで、回答者に自由に語ってもらうことで、テーマに関する深い内容を知ることができるが、その反面、調査の性格上、多数の標本(被調査者)を対象にすることはできず、また実査においてはひじょうに手間がかかる。加えて、調査者あるいはその代理である調査員の個性や能力、そして調査対象(ケース)の個別性などの影響も強く、結果の一般化には十分な注意と慎重さが要求される。
 自由面接法は、何らかの一定の事象についての少数の限られた事例(ケース)に関しての自由な面接による面接法である。それは個別訪問の面接法や場所を特定した個人面接法を意味し、調査者(あるいは調査員)が調査対象者(被調査者)にたいして調査主題にしたがって自由に質問し、自由に語ってもらう面接法である。ときに形式の定まっていない「聞き取り」調査法なども、自由面接法と呼ばれたりする場合がある。
 自由面接法は、非指示的面接法であり、非形式的面接法でもあるが、この調査法は、調査者(あるいは調査員)が自由に判断して質問を構成しながら被調査者(被面接者)から自由な回答(あるいは語り)を得る調査法であって、先にも述べたように一般的に面接法と言えば、この自由面接法を意味している。この調査法の基本は、文化人類学、農村社会学、民族学などで行なわれている、いわゆるライフヒストリーについての聞き取り調査(「ライフヒストリー調査」)、さらに購買行動などの研究で無意識的な深層心理を解明するために行なわれる「深層面接法」などが典型的な調査法である。
 自由面接法では、調査者は、被調査者の体験内容の事実項目、疑問点、要点などを深く追究することが可能ではあるが、他方において質問の自由度が許されているということは、それだけに調査主題について十分に熟知したうえで、調査対象者(被調査者)とは柔軟な対応ができる高度な面接能力が要求されている。そのために、その能力の養成には時間がかかるとともに、調査対象者の数についても自ずと制限され、少数にならざるを得ない。
 実際には、費用や能力の点からだけでなく、より詳細なデータ収集のためには調査員ではなく、調査計画を立案した調査者自身が直接面接を行なうことが多い。そこでは一連の質問文は、あらかじめ用意されてはいない。かりに用意されていても大まかな質問項目(チェック・リスト)だけといった程度である。したがって指示的面接法や形式的面接法、あるいは構造化面接法といった調査方法にたいして、非指示的面接法は、いわゆる非形式的面接法あるいは非構造化面接法と呼ばれたりすることになる。それは面接それ自体によって調査事象の構造やメカニズムをより深く探っていくのに適した調査方法であるからである。要するに自由面接法は、質的調査の面目を最大限に発揮できる調査方法であるということになる。
 なお面接調査は、原則として調査者あるいは調査員が調査対象者(被面接者)のところへ出かけていって、一対一で行なう場合が普通であるが、調査対象者の回答(発言あるいは発話)をより活発なものにするために、一人の調査者にたいして5〜6名の調査対象者という形式で行なう「集団面接調査法」が実施されることもある。
 自由面接法は、調査者が直接に被調査者と出会い、言語をとおして必要な情報を収集する調査方法であって、実際の面接場面では、言語だけでなく、その話し方や表情や態度や身振りや手振りなど、それらを観察することによって得られるさまざまな情報を入手することができ、アンケート法では、けっして得られない多くの情報を得ることが可能である。
 この調査法は、人びとが主観的な世界のなかで生活していることを前提にして、その主観の世界を探究していく研究方法である。それには通り一遍のアンケート調査では捉えることのできない人びとの真の動機づけやホンネやタテマエなどを把握することが可能となる。それはまた観察法などでは知りえない被調査者の価値観や意識の輻輳を理解することが可能である。

観察法との違い
 面接法は、調査者が被調査者の意識や価値観や動機づけなど、その人の心の内面を言語という情報あるいは非言語的な情報をとおして理解し、被調査者の行為のより深い理解を目的としている。面接法は、出会い、そして言語をとおして相互作用することによって情報を入手していく。それだけに観察法のように調査場面の客観的なコントロールは難しく、客観性の保持に常に留意する必要がある。
 一方、観察法は、その点で客観的な姿勢の保持は容易ではあるが、その分、面接法のような詳細な情報は得られない。それどころか、客観的にデータや情報を得ているようであっても、得られたデータあるいは情報を極めて主観的かつ独断的に解釈しかねない場合もあり得る。面接法の強みは、客観性の保持に留意しつつも、被調査者から直接に情報を得て、情報の真偽の確認をすることによって、より正確かつ詳細なデータや情報を入手することが可能である。

⇒ 3.観察法

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