面接調査の実施にあたっては、どのような準備が必要になるのだろうか。まず、調査事象を体験している限られた人びと(対象集団)から面接調査の対象者(被調査者)を選択しなければならない。量的調査の場合は、各種の標本抽出台帳から統計的手続きにしたがって一定の標本数を抽出(サンプリング)することになるが、質的調査の面接法の場合には、対象集団のなかから調査事象に関する正確な情報量をもっていると思われる調査対象者(被面接者)を、名簿リストなどがあれば、そこから恣意的に選択することになる。この場合、調査対象者(被調査者)の選択は、それが量的調査のような代表例ではなく、あくまでも質的調査では典型例であるということが指標になる。
調査対象者の候補が選択されたならば、個別に交渉して面接調査の許諾を確認して、最終的な対象者名簿のリストを完成させることになる。こうした最初の交渉からもうすでにインタビューは始まっているといってよい。面接調査というのは一回だけのインタビューとは限らない。その後、数回に分けてインタビューを実施する場合もある。そこで、調査者と調査対象者(被面接者)との良好な人間関係、すなわちラポールの形成とその維持が重要になってくる。
このようにして被面接者を決定したならば、面接調査の日時と場所を相談のうえ取り決めて、いよいよ面接を実施することになる。面接法は、原則として一連の形式的な質問文を用意することはないが、被面接者の基本属性や質問(あるいは刺激ともいう)の項目(チェック・リスト)を大まかに決めておくことが必要である。基本属性や調査項目の目安を表にして掲げてある。参考にしてほしい。これはあくまでも典型的な項目であるので、問題意識によって項目の入れ替えや新たな項目を付け加えて使うといった工夫が必要である。基本属性のチェック・リストも質問項目のチェック・リストも同じことである。適宜、被調査者に対応させて柔軟さをもって作成されなければならない。
チェック・リストの参考例
表1 基本属性項目の目安
(1) 現住所と同居家族 (2) 対象者の出身地 (3) 年齢(生年月日)と性別 (4) 学歴と専攻 (5) 兄弟姉妹(住所と付き合い状態) (6) 対象者の結婚状況(未既婚や離婚) (7) 対象者の職業 (8) 配偶者の年齢や職業や学齢 (9) 父母の出身地(都市、農村の別) (10) 父母の年齢や職業や学歴 (11) 今後の課題や抱負はどんなことか (12) 対象者の子どもの数や年齢や職業 (13) 孫の数や年齢 など
表2 質問項目の例
(1) どのようなことをしているのか(what)。 (2) はじめたきっかけは(why)。 (3) いつそれをするのか(when)。 (4) どこでするのか(where)。 (5) だれとするのか(who)。 (6) どのようにするのか(how)。 (7) 満足感は得られるのか。 (8) 悩みや問題点はどんなことか(個人的レベル,社会的レベル)。
上の表のそれぞれからも理解されるように、基本属性については、調査事象と被対象者との関連においてそれぞれ必要な属性を質問することになる。そのためには基本属性のチェック・リストもそれに応じて作成されていなければならない。また質問項目のチェック・リストについては、それこそ調査事象との関連でその内容も決まってくる。何を質問すべきかは、それぞれのテーマによって異なる。というよりは、仮説構築のための面接調査なのか、仮説検証のための面接調査なのかによって質問項目のチェック・リストも大いに異なる。
仮説検証であれば、どのような仮説が構築されているかによって自ずから質問項目のチェック・リストも決まってくる。欠かすことの出来ない重要項目は、すべてチェック・リストに載せておく必要がある。面接に際しては、チェック・リストの項目を順に質問するというのではなく、状況に応じて臨機応変に対応していくことが必要になる。すべて言葉にして聞き出すとは限らなくても、考えられる質問項目はすべてチェック・リストにしておくことが重要である。
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