社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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2-2 面接調査を行うにあたって
2-2-4 面接の仕かた


面接の開始
 面接の時間や場所には、絶対に間違えたり遅刻したりなどしないようにすること。面接は面接室など、第三者が出入りしない場所を選ぶ方がよい。また被面接者の意向を配慮するようにすること。経験的には、ときに喫茶店でとか、公園でとかということもあり得る。出会ったら、すぐに挨拶をし、自己紹介をする。この場合、名刺を用意しておくとよいが、学生証など身分証明書は呈示できるように常に携帯しておくべきである。
 面接の成否は第一印象で決まると言われている。最初の近づきがスムーズでなく、そのまま面接が進行すると、悪い印象がいつまでも影響して、面接の成否に響いてくる。まず被面接者にきちんと挨拶をし、自己紹介をし、面接に応じてくれたことへの感謝の気持ちを表現することが重要である。

ラポールの形成
 被面接者にとって面接の場は、見知らぬ相手(調査者)に自分の内面を語らなければならない状況であって、精神的にかなり負担の大きい事態であるといってよい。そこで調査者は、被面接者が安心して語ることのできるような雰囲気づくりに心掛けることは極めて重要である。そのためには被面接者が面接者に信頼感をいだき、早めに面接の状況に安心感をもって応じてもらえるようにすることが重要である。面接者のことば使いや聞き取りの態度や応答の仕かたは、この際の大きな要素となってくる。
 それは被面接者と面接者がたがいに温かい親和的な安心感のある、そして信頼の置ける人間関係、すなわち「ラポール」の形成が重要な課題となる。面接場面にラポールが形成されると、非面接者に過度な警戒心や自己防衛の意識が低くなり、信頼性の高いデータが入手できるようになる。ラポール形成のためには、はじめに簡単な日常会話から入り、被面接者の発話に誠実に関心を示し、常に受容的かつ共感的に対応することが何よりも大切である。つまり、被面接者の自由な表現を保障するように受容的かつ共感的、ならびに傾聴的な応対に努め、審判的であったり、あるいは評価を下すような応対の仕かたは絶対にしないように、常に「学ぶ者の姿勢」を保つことが重要である。

面接条件の確認
 面接に入ったら、まず依頼時に述べた研究の目的、被面接者の抽出の理由と方法、録音の許可、および記録の管理と結果の公表の仕かたなどについて説明し、確認を得ておく。そして面接への参加は、自由であり、記録の拒否や、面接途中であっても中止の申し出が可能であることも伝えておく。このことは面接を拒否されないようにするための説明であって、被面接者の主体性が尊重されていることを確認しているものである。
 ここでは選ばれた被面接者の発話や語りに大きな価値があり、一言一言が貴重なデータであり、価値ある資料であることを表明することが重要である。また面接が今回限りで終わる場合もあるが、再度重ねて面接をお願いしなければならない場合もある。そのときのためにも、今後共に必要になった場合のことを考慮して協力を依頼しておく必要がある。

記録の取り方
 面接において得られる情報は、フィールド・ノートにメモされることになる。記録される面接の情報を確かなものにするためには被面接者の許可を得たうえで録音を取ることが望ましい。可能であれば、表情や動作などの情報を手に入れるためにも、録画ができれば、それは貴重なデータとなる。被面接者にとって抵抗のある内容であれば、一時的に録音などを停止することもあってよい。録音機材は、被面接者に必ず示しておくべきであるが、面接開始にあったては、むしろ目に付かない場所に置くほうが良い。
 ICレコーダーなどには、必ず最初に、日時、被面接者氏名または番号記号、面接場所、面接者氏名、記録番号などを吹き込んでおくこと。被面接者の許可なしに録音したり録画したりしてはいけない。録音に許可が得られない場合には、発話は、筆記による記録をしっかりとって置く。その場合には、被面接者のことば使いなどを可能な限り、そのまま記録していくことが重要である。
 面接では、発話された内容はメモなどによって記録されるが、フィールド・ノートには発話のみならず、被面接者が言語としては語ってはいないが、表情や態度や身振りや手振りは、極めて重要な情報である。しっかりと観察してメモにしておく必要がある。語らない非言語的表現の意味することに面接調査の分析は及ばなくてはいけない。

面接時の配慮
 ラポールが形成されている関係なので、面接が進行していく際には、つねにリラックスした雰囲気で被面接者が自己表現できるように受容的かつ共感的な態度を心がけ、集中して聞きつづけることが大切である。単純に「はい」「いいえ」などと回答していく質問においては「それはどうしてでしょうか」「なぜそういった回答なんでしょうか」などと質問してみるのもよい。自由な回答を求める質問であれば、回答に応じて詳細にホンネを質問していくと良い。良い質問をよいタイミングで出していくことが大切である。回答には、「なるほど」とか「そうですね」などと相槌を打って共感していくと良い。詳細を尋ねる場合には「○○って」とか「とおっしゃいますと」などと、相手の言葉をそのまま繰り返して質問してもよい。準備した質問に表面的にこだわっていると、折角、重要な回答が語られ始めようとしているのに抑えてしまうことになりかねない。つねに流れに沿いながら、柔軟な質問のタイミングを配慮すべきである。話が横道にそれたら、やさしく元に戻すようにすればよい。被面接者が沈黙した場合、また答えにくそうにした場合、「大丈夫ですよ。ゆっくり考えて答えてください」と応じたり、あるいは待ってあげる姿勢が重要である。

面接の終了
 面接の終了時には、今日の面接が価値あるものであったことを伝え、十分に感謝の気持ちを伝えることが重要である。場合によっては、簡単なお礼の品を渡すこともある。出向いて来てもらった場合には、少なくとも交通費は負担しなくてはならないだろう。面接に関しての印象が薄れない間に記録用紙に必要事項を記入しておくことが重要である。

得られた結果の整理
 得られたデータは、基本的には文字に文章化されなければならない。記録おこしは、プライバシーの保護という点では面接者自身が行ない、研究者以外の第三者が記録内容を知ることのないようにするように注意する。記録おこしのなされた転記記録はトランスクリプトと呼ばれる。自由回答などには、発話カテゴリーを作成しておいて、発話の類似性や相互関係などから分類整理し、集計していくとよい。

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