面接の練習(その1)
まず面接の実際を練習してみよう。そのためには2名(X・Y)が一組になって、クラス全員のまえで、面接の練習を発表する。ここでの2名は、互いに知らない者同士である。こうした組み合わせを意図的に構成する。3組ほど同じことを練習して、確認しあうとよい。
- Xが自己紹介を3分間くらいする。Yは、その語りを聞きながら、Xの非言語的な表現である話し方や話す態度や姿勢や表情や身振り、手振りなど、Xの特徴についてフィールド・ノートに記録していく。すなわち、XについてのYの印象をメモしていくのである。しっかり観察することが大切である。このメモは、Xには直接には読まれないようにしたい。
- Xが自己紹介し終わったら、つぎにYは、自己紹介するというのではなく、自分の名前だけを紹介して、XについてのYの印象(ノートしたこと)を前提にして、いま知りえたXについての情報(言語的および非言語的なすべての情報)をあたかも自分がXであるかのように、話の内容はもちろん、話し方、態度、姿勢、表情、身振り、手振りを、できるだけオーバーに真似して見せながら、Xになりきって自己紹介をする。
- つぎに教室の全員からYにたいして質問を受け付ける。Yは、Xになり代わって、その質問に回答する。Yの聞いていない質問であってもよい。Yは、Xであればと考えて、あたかもXになりきって自由に判断して回答していく。
- これが終わった後にXに訂正の機会を与えて、誤解のないように名誉挽回などしてもらう。
- そのあとでXは、Yの役割演技を見て、どのように感じたかを話してもらう。そして、最後にクラス全体で、この面接の練習で何を感じたかを話し合う。
ここでの検討課題は、第一に非言語的なメッセージが大きな意義を有していることを学ぶこと、第二に自覚してはいないが、聞き手に与えている印象が何であるのかを学習すること、第三に、聞き手は話している内容だけではなく、その話し手の人格や性格なども判断しながら、説明を聞いていること、そして第四に、聞き手は、中立的に的確に話しての内容を聞く必要があることなど、である。
面接の練習(その2)
つぎの面接の練習は、ここでも2名(A・B)が組みになって練習することになる。この場合、クラスの全員が2名の組になって面接の練習を行なう。AとBは、一方が面接者になっている場合には、もう一方が非面接者になる。そして互いに交替しながら面接の練習をする。面接の時間は1名につき、15分間くらいと考えて面接をする。この面接の練習は、ほぼ面接法の手順にしたがって実施することになる。したがって、まず(1)調査目的や(2)作業仮説や(3)チェック・リストなどを準備する段階から練習することになる。
例:「子どものころの遊び」について
テーマについては、できれば前の週に学生たちに連絡しておく方がよい。突然の課題の提出であると、経験からいって、多くの学生は戸惑うようである。もちろん、同じようなテーマであれば、これに拘ることはない。
- 授業が始まったら、直ちにまず調査の目的を書かせ、この調査を面接法で行なうことを明記させるようにする。目的が、それほど長い文章にはならないだろう。与えられた調査目的に各自の意義を文章化させることになる。
- つぎに作業仮説を書かせる。たとえば、幼少のころは年齢を越えて、多人数で戸外で遊ぶことが多いように思うが、学年が上がるにしたがって同学年の少数の友だちと、あるいは一人で過ごす時間が多くなっていくように思われる。
また遊び道具も自然のモノや手づくリのモノから次第に高価な複雑な玩具に移っていき、遊ぶ場面も、学校の帰り道にそのまま遊ぶという形から何日も前から約束を取り付けてから遊ぶという形に変わっていくように思える。これは自分のこれまでの記憶から推測して仮説を立ててみたが、他の人たちはどうだっただろうか。面接調査を通して確認してみたい。
したがって、今回の作業仮説を要約すると、「子どものころの遊び」は年齢を経るにしたがって、日常的な時・空間から非日常的な時・空間へと変化していくということになる。このことが実証されるか、面接法によって確認していきたい。
- このような仮説を立てたとしても、できれば、図書館などに行って既存のデータあるいは既存の理論が存在しないかを確認しておくとよい。たとえ同じ研究や理論があっても、それはそれなりに追検証ということであって、無意味なことではない。最終的に報告書にまとめる際には、こうした努力は、すべて文章化されて報告書の意義を高めることになる。引用する際には、その資料の出典を必ず明記するようにすること。
- 第4番目には、調査対象者およびその属性を明記するようにすることが大切である。また調査日時や調査場所も明記しておきたい。
- つぎにチェック・リストを作成して、報告書にはそのチェック・リストを掲載しておく必要がある。往々にして学生たちの報告書においては、単にチェック・リストと名を打ってチェック項目のリストが羅列されているだけという場合が多い。それが何なのか、それに付随した、然るべき説明を加えておくことが重要である。
- ここで実査に入るわけであるが、今回の面接の練習は、ここで行なわれる。先ほどのように1名につき、15分間くらいの面接の練習をする。フィールド・ノートにQアンドAの形で記録していく方法もあるが、チェック・リストにしたがって記録用紙を用いて記録していくのもよい。またICレコーダーなど録音機材が用意できるのであれば、それらを用いる練習もしておきたい。
- こうした面接の練習を2名のあいだで適宜に交替して練習することになる。面接に入る前には、先ほどの仮説の構築やチェック・リストの準備が必要である。そのための時間配分を考慮しなければならない。それらの作成が終了次第、各組み合わせにしたがって面接の練習を開始すればよい。
- 2名がともに面接の練習が終われば、報告書の作成に入ることになる。調査報告書、すなわち調査レポートは、ワープロ(A4)で4〜5枚といった程度のものになる。実査をQアンドAでエピソードを記録する方法もあるが、やはり節なり項を改めて、「調査結果」を客観的に呈示するようにする。この場合、工夫をこらして図にしたり表にしたりできれば、なおよい。そのような図や表には、たとえば先の仮説であれば、上部に小学生以前、小学生低学年、小学校高学年、中学校生、高校生などと記して、表のタテを決定し、左横部に(1)誰と、(2)何人で、(3)何をして、(4)どんな道具で、(5)遊び場所は、(6)いつ(時間帯)、(7)印象に残っていること、などとしてヨコの内容を決定して表を作ると、分かりやすいプレゼンテーションが可能となる。
なお得られたデータは、あくまでも客観的に分かりやすく呈示すべきである。その意味でも図や表にすることをすすめたい。
- つぎに得られたデータについて考察あるいは分析することになるが、ここでは先ほど呈示した図や表にもとづいて、調査者の判断や解釈を呈示することになる。ここでは仮説との関連で、何が言えたのか、また何が言えなかったのかを明記していく。ここが面接調査の効果を発揮させることのできる山場である。
- 最終的には、今回の面接調査で出来たこと、また出来なかったこと、そして面接をして学んだことなど、加えて面接調査の印象などを記していく。さらに、見えてきた今後の課題なども明記しておくことができればよい。そして、参考文献などがあれば、この最後に整理して呈示しておくと良い。
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