面接調査の結果を生かすも殺すも、すべて面接をした後での得られたデータの分析とまとめの作業の出来不出来にかかっている。面接調査から得られたデータは、主に記述的に処理され、統計的な処理がなされることはほとんどない。すなわち、質的調査である面接調査の結果は、記述された文章の形式で整理され、かつ呈示されるのが普通である。それは面接の結果が形式的面接調査以外は、基本的に形式的には不定形であるからである。だからこそ逆に、面接調査の結果についてのまとめの作業を行なうにあたっては、客観性を重視したデータの呈示ならびにまとめ方を意識的に行なうようにしなければならない。
まず面接が終了したら、まだその余韻が残っているうちに、それぞれの事例について印象や感想を箇条書きにではなく、まとまった文章としてA4(ワープロ)で1〜2枚程度にまとめておくとよい。面接は、主に言語によるコミュニケーションではあるが、文章化には被面接者の表現、表情、身振り、手振り、その場の雰囲気など、非言語によるコミュニケーションの要素が極めて重要であるので、十分に盛り込んでおく必要がある。
つぎにフィールドノートにとったメモをキーワードや類似のテーマなどによって整理分類しておく。回答は不定型であり順序もバラバラであるから、情報カードなどを活用していわゆる概念やテーマの固まりをつくりながら、インタビュー結果の要約をしておくとよい。さらに、ICレコーダーなどで記録した面接の一部始終を、トランスクリプト(ノートに起こして文章化させたもの)にして、文字情報として正確に整理しておく。
写真やビデオの撮影(録画)が可能であった場合には、さらに情報量が増大するうえに、分析やまとめの段階で活用できるので、現像や編集作業をやはり概念やテーマ別に行なっておく必要がある。これらの第一次情報、すなわち生のデータを整理したならば、それらを総合して調査報告書あるいは研究論文にまとめていくことになる。
質的データと量的データ
質的データとは、数値であっても数量的な意味を持たない数値や、記号や言葉で得られたデータである。たとえば、「性別」「職業」「学歴」など、フェースシートの部分で問われる調査項目(属性)は、通常、質的データとして扱われる。この種の質問項目に対しては、「性別」を問うのであれば、「男」と直接的に言葉で回答を得る場合もあれば、「1男性 2女性」「M男性 F女性」といった選択肢から該当するものを選んで回答を得る場合もある。いずれにしても、調査項目で問われている属性に関するカテゴリーに対応する記号や数値によってデータが表されることになるが、この種のデータに関しては、平均を取るなどの数値的な比較や検討は基本的には無意味となる。
量的データは、ある特性が量や程度で表されるとき、それに対応する数値で得られたデータであって、たとえば、身長や体重、体温など、物理的に測定できるデータがその典型である。それは多くの場合、連続的な値を取り得るが、年齢、収入、何らかの事象の頻度などは、量的データに含められる。
データの整理とコード化
調査で得られたデータは、分析のために、最近では、まず、コンピュータに入力されることになる。その際に、調査で実際に回答された言葉や記号を、入力の容易さや集計の効率化を図るために、より簡単な記号や数値や概念に置き換えて入力していくことになる。この置き換えの過程を、コーディング(コード化)と呼ぶ。
自由記述や聞き取りなどの質問項目には、言語的な回答が得られることになるが、それを文字のままコンピュータ入力するのが煩雑であり非効率の場合には、まず最初に回答をいくつかのカテゴリーに分類して、それに対応する記号や数値を当てはめて整理するとよい。コーディングとは、このような元のデータを簡単な記号や数値や概念に置き換えてまとめることを指していう。重要なことは、その際に元のデータ、あるいはデータの範囲と分類したコードとが過不足なく一対一に対応していることが重要である。
すでに 2-3-2 面接の実査 参考事例(1)(2)(3)において呈示しておいたように、データの整理は、基本的には図や表にしてビジュアル化(一見して概観が把握できるようにすること)しておくことが望ましい。それにはプレゼンテーションのセンスが問われることになる。得られた生のデータをできるだけ客観的に提示するということは、単にデータを加工せずにそのまま呈示するということではまったくない。むしろその逆であって、しっかりと加工して呈示するということである。
データの分布の概観
データの分析は、どのようなデータがどのくらいあるかを数えたり、あるいは特定の基準で分類し配列したりするところから始まる。集計という作業は、このような手続きを代表している。データを集計することによって、データがどのように分布するかを概観することができ、それによって、その後のデータ分析の方向も定めることができる。データの分布については、データの客観的な把握が前提であるが、どのようなデータであるのかがチェック・リストとの関連(すなわち仮説との関連)で分類、整理され、まとめられる必要がある。
そのうえでまとめられた客観的なデータ(図や表にしておくことが望ましい)について、しっかりとした解説が必要である。参考事例(1)(2)(3)において見られるように、ここでの解説がつぎの分析の深さへの誘いになることに留意されたい。そのうえで次に分析がなされることになる。したがって集計は、単純な作業ではあるが、データ分析の過程につづく極めて重要な位置を占めることを十分に理解しておくことが重要である。
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