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3-1 観察法とは何だろうか?
3-1-1 観察法とは? 〜2つの観察法〜


観察法とは

 観察法とは、何らかの対象について、五感を用いて直接的に記録・分析する営みや、それらに関する誰かの記録を収集・分析する営みを指します。
 前者は、調査者によるオリジナル・データが得られるという大きな利点がありますが、知りたい情報すべてにアクセスできるとは限りません。その場合、後者の方法により対象に迫ることができるでしょう。ここでは、前者と後者を併せて観察法とすることにします。

  • 五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)
    例:街並みや景観、雑踏の音、街の匂い、料理の味つけ、建築や内装の手触りなど
  • 記録(文字、絵、画像、映像、音声など)
    例:新聞・雑誌の言説、日記、スナップ写真、家計簿、CM、個人のホームページなど
Think!
⇒ 観察法での記録・分析の対象となり得るものを、「五感」「記録」のそれぞれについて事例をあげてみよう。

参与観察と非参与観察
参与観察
調査者が、その対象の社会や集団に成員として“参加(=生活や活動をともにする)”しながら観察。調査者自身の“体験”も貴重なデータとなる。

非参与観察
調査者が、第三者として対象を“ありのまま”に観察。様々なものを対象にできる。(例:赤ちゃん、街の落書き、雑誌の記事など)
cf.「参与観察法が踊る阿呆なら、非参与観察法は見る阿呆」
(大谷ほか 1999: 281)
→たとえば阿波踊り。一緒に踊ってみてわかること、見物することでわかること
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ここでは「非参与観察法」について考えていきます
 ここでは便宜上「非参与観察」という言葉を用います。ただし、最近は、参与観察、非参与観察という区別を明確に行うこと自体が難しなってきていますし、従来の意味での観察法の枠組みを超えるような手法も今後増えていくでしょう。
Think!
⇒ 参与観察と非参与観察の事例をそれぞれあげ、それぞれの方法からわかることをあげてみよう。また、同じ事例を別の方法(参与観察なら非参与観察、非参与観察なら参与観察)で行った際にわかることも考えてみよう。

観察法の特徴と魅力

観察法の心構え
 観察法は、質問紙調査法(アンケート法)に比べると体系的・積み上げ式の方法論とはいい難い側面があります。このことは、観察と分析が個人の力量に左右されやすいということも意味しているといえるかもしれません。
 どんな調査法でも、収集した材料(情報やデータ)を分析することには変わりません(逆に、得られた情報から言えないことは、単なる「思い込み」の可能性がありますよ!)から、観察法を行うにあたっては、まずいかにきちんと(=正確に!・丁寧に!・詳細に!)観察を行うかという点が最大の心構えです。「見る」ことが「見てるだけ」では観察法でありません。「視る」「観る」のが観察法です。

対象の多様性
 しかし、こうしたことは同時に、観察法の多様性とその魅力につながっているともいえます。まず、観察法の対象は、いわば「あらゆるもの」を含んでいるという点。例えば、街並みについての観察では、建物の配置やそのつくりだけでなく、看板や広告の色や文字、様々に配布されるフリーペーパー、季節や気温や湿度、匂いの変化、街路樹の種類や量、街路の感触、その街を紹介する雑誌や新聞記事の言説、人々の意見、会話の内容、語られている文脈など、数え上げればキリがないほど。観察法の魅力は、こうした素材や対象を発見する楽しみにもあるのです。

方法の多様性
 また、こうした対象の多様性は、その方法の多様性と関連しています。建物の配置は地図だけでなく、スケッチや写真からもわかるでしょう。広告については写真や映像から、会話については音声や取材メモから、それぞれわかるでしょう。対象や目的により相応しい方法を考える(創り出す)こと自体、やはり観察法の魅力なのです。
 さらに、観察法は、他の方法論を排除しないということも大きな特徴です。上にあるように、インタビュー法やドキュメント分析、資料検索法などを併用することはよく行われています。

観察法を“楽しむ!”
 私たちの日常は、普段とは異なる視点から様々な感覚を研ぎ澄まして接することで、新鮮な驚きと様々な発見を提供してくれる場となるハズ。以上の心構えと魅力を理解して、観察法を楽しもう。


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