社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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3-1 観察法とは何だろうか?
3-1-2 非参与観察法のバラエティ


 非参与観察法は、“非”という文字がついていますが、決して何かより劣ったり欠けたりした方法論ではありません。むしろ、観察法は、想像以上に多くのものを対象とすることができ、その対象を通して様々な事柄を発見する“楽しい”方法なのです。

例1:ストリートミュージシャン  ⇒ 5-1-5 構想を組み立てる―多角的なアプローチ
 今や、ほとんどのターミナル駅で見かけるようになったストリートミュージシャン。彼(女)らは、誰に、何を歌い、それを取り巻く人は何に耳を傾けているのだろうか。また、街に彼(女)らがいることにより、何が変わるだろうか?

対象: ストリートミュージシャンとそれを聴く人々
場所: JR三ノ宮駅北口、南口、阪急三宮東出口付近、その他
視点: ミュージシャンの特徴から分析する(年代、性別、服装、場所、人数など)
演奏曲を分析する(曲のジャンル、歌詞、CD、ビラなど)
演奏スタイルを分析する(誰に対して、演奏スタイル、熱心さ、アピール度など)
観客の態度を分析する(観客の分類、熱心に聴いている人の特徴など)
方法: 写真・ビデオ撮影、録音、スケッチ、インタビュー、地図・CD・ビラ・雑誌など の資料収集など、もちろん参与観察もできる(自分が演奏することも!)

例2:“酒場”の国際比較
 日本には居酒屋があるが、アメリカのバー、イギリスのパブ、イタリアのバール、スペインのバルやタブラオ…など、海外の“酒場”にも、その国々独特の歴史やスタイルがある。こうした酒場を通して、その国の文化や人間関係の特徴を浮き彫りにできないだろうか?(酒場に限らず、同様の見方で、どのような様々な“場面”の地域間・時点間比較ができるだろうか?)

対象: 日本を含む諸外国の酒場
視点: 酒場の数、立地、歴史など
酒場が扱う商品(酒と肴だけという国や、タバコやバスの切符を売る国も…)
酒場の構造(間取り・インテリア、エクステリアなど)
酒場での人間関係(酒場に集う時間帯、客層、人数、客単価など)
方法: 新聞・雑誌での記述内容の分析、小説・映画・音楽のシーンの分析、地図、店の図面、店のスケッチ、看板・店構えの写真、+参与観察も!?

例3:タウンウォッチング:もうひとつの“街”ガイド
 関西には、神戸・大阪・京都・奈良・和歌山など、歴史的にも文化的にも魅力的な街が多いとされる。書店には観光名所やショッピング、飲食店などを紹介したガイドブック類が多いが、しかし、街の魅力はそこで語られていることだけだろうか?もし、そうでないとしたら、それはどのようなこと(場、人、風景など)から浮き彫りにすることができるだろうか?

Think!
⇒ 「タウンウォッチング」は、このパートの2番目の課題として実際にやります。各自考えておこう。
その他の例:
  • 女性誌の変遷:
    女性誌で語られる“女性”の変遷について、その特集記事のテーマ、記事の言説、写真、広告などから分析してみる。
  • 日記サイトの“非日記”性:
    日記とは、本来自分だけが見ることのできる、いわば“秘密”の記録。しかし、現在、インターネット上には多くの日記サイトがあり、公開するだけではなく、様々な交流にまで発展している。これらは筆者にとってどのような存在か?誰に何が語られ、これまでの日記と何が違うのだろうか?
Think!
⇒ 私たちの身の回りで、どのようなことが調査の対象となるだろうか?対象と、そこからわかることの組み合わせを考えてみよう。

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