社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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3-3 観察法の企画
3-3-2 記録のしかた


「五感」を記録する 〜調査記録の重要性〜

 見て、触れて、感じることももちろん大事。しかし、それらを丁寧に記録していくことがなければ調査とはいえません。レポートや論文で何らかの議論をするために調査をするということは、それらの議論を裏付ける「証拠」を残し、いつでもそれに立ち戻ることができないと、何の説得力を持たなくなります。記録がなければ、その調査は行われなかったといっても過言ではないでしょう。
 特に、見ることや聞くことなどは、私たちの日常生活では、意識せず、知覚されずに行っています。調査中は、面倒がらず、これらを「可視化する」ことに注力しよう。後で、「どうだったっけ」と思っても、もはやどうしようもない場合が多いから。


調査の記録
  • 調査メモ
    観察したできごとを詳細に記録し、分析するための基礎資料となる。調べたこと、聞いただけを記録するのではなく、自分が感じたことや考えたこともどんどん記録していく(調査日記・日誌など)。数量的把握の場合は、事前にチェックシートを作っておくとよい。また、なるべくその場で記録することが望ましいが、多くの場合困難であると考えられる。困難な場合には、まず簡単なメモを取り、なるべく早く詳細に書き直す。
  • 画像
    写真をとる、あるいはスケッチをするなど、視覚的な情報が必要な場合に。また、調査内容を報告する際にも有用な素材となる。その時に気づかなかったことでも、写真を見直すことで改めてわかることもある。
  • 動画
    静止画だけでは記録しきれないこともある。例えば、祭りなど、動きそのものが重要な資料となる場合など。
  • 音・音声
    インタビューをするなど、会話や質問に集中できるように、その会話の内容を記録する場合もある。ただし、必ず記録していることの了承を得ること。また、「音」に着目する場合は、録音は必須となる。
  • 収集した資料など
    参与観察でも、非参与観察でも、自分が直接記録をとることと同時に、様々な資料を収集することがある。これらは、必要に応じて説明を加えて整理する。
  • その他
    そして、「記憶」も重要な記録メディアです。

記録の注意事項
  • 観察後、なるべく早く記録する。
     =自分の記憶だけでは頼りない!
  • どんな些細なことでも、なるべく正確に記録する。
     =後で、あれはどうだったっけ?と思っても遅い!
  • 特に参与観察の場合、調査対象との「距離」を意識する。
     =近づかないと調査できない、しかし、近づきすぎると対象に影響を与えてしまうかもしれない。
  • 必要な場合は、調査の許可を得る。
     =相手やフィールドの信頼を得ることが、調査の第一条件。
  • プライバシーに配慮する。
     =自分が逆の立場だったらどう思うか考えよう。

調査倫理、プライバシーについて
  • プライバシーは最大限尊重すること。
  • 調査の協力をお願いする場合、あくまでも対象者の自由意志で。強要は厳禁。
  • 特定の人について記録をする場合(特に機材などを用いる場合)には、承諾を得ること。
  • 調査の目的、調査者の身元、調査の発表のされ方など、求められたら(求められなくても)、きちんと説明できる準備をする。

誰かが、フィールドからの信頼を一度でも損なうことが、その後の、あるいは他の調査への信頼や協力にとって致命的な問題となることを忘れずに。


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