社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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4-1 ビジュアル情報を考える
4-1-1 ビジュアル情報と文字情報


 私たちの社会や文化の記録媒体として、映像が利用されるようになったのは、600万年にわたる人類の歴史上、比較的新しい出来事でした。今日発見されている中で、人類最古の洞窟壁画であるとして話題に上った南フランスのショーベ(Chauvet)壁画でも、せいぜい3万年前です。それでも、音声言語の複製媒体である文字の発明と比べると、2万数千年も先行する出来事でした。
 絵画の発明は、文字の発明に劣らない、人類文化史上画期的な出来事でした。文字は、長年にわたり、暗唱に頼ってきた重要な社会的、経済的、技術的な情報の蓄積、伝達の効率を飛躍的に高める上で、大きな貢献をしてきました。しかし絵画は、後の絵巻物で証明されるように、文字あるいは言語の補助なしに、複雑な情報を伝えることが難しいという性質があります。
 ただし、文字は対応する音声言語の単語や文法を知らないと解読できませんが、ビジュアル情報は言語の違いを超えて、つまり、文化や時代を超えて、情報を伝える力を持っています。文字は、古代文明社会による発明以来、そして印刷術の発明以後はとくに、文字媒体による情報処理が文明社会におけるコミュニケーションのメディアの中心であり、ビジュアル情報は常にその補助的手段としての役割に甘んじてきました。
 しかし、近代の写真、映画の発明をきっかけとして、ビジュアル情報が主役となるコミュニケーションのあり方が、登場しました。その後のテレビ、インターネットの発展の中で、コミュニケーションにおけるビジュアル情報の大きな伝達力が、今日ほど利用されている時代はありません。近代社会は、まさに「映像の時代」でもあったわけです。
 文字情報に比べると、ビジュアル情報は時代や文化の違いを超えて伝達する力が高いと、言いました。本当にそうでしょうか。このことを考える前に、実はビジュアル情報が何を伝達するのかを、明確にしておかなければなりません。

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