社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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4-3いかに視覚イメージを読み解くか――第1次世界大戦期、米国プロパガンダポスターを例に I.基礎篇:イントロダクション
4-3-2 分析に入る前に歴史的背景を確認しよう


第1次世界大戦とは?

 第1次世界大戦は、帝国列強の植民地獲得をめぐる対立が引き起こした戦争である。サラエヴォでのオーストリアの帝位継承者暗殺事件を引き金として、ドイツ・オーストリアなどの同盟国と、英米仏露などの連合国との間で闘いは1914年から18年まで続いた。それは人類が経験した初めての世界規模の戦争であり、経済力・工業力・労働力などの国力や銃後の支援が鍵となる総力戦であった。主戦場となったヨーロッパには航空機や戦車、潜水艦が出現し、機関銃や毒ガスが使われ、泥沼の塹壕戦に入った戦争は、人々の当初の予想を越えて長期化する。モンロー主義を掲げていたアメリカが、1917年4月、ドイツに宣戦布告して参戦し、徴兵制をしいて200万人の軍隊をヨーロッパに送ったことによって、形勢は一挙に連合国側に有利になり、翌年ドイツは降伏した。アメリカは戦後、世界経済・国際関係の中心となり、大量消費・大量生産の時代に入っていく。第1次世界大戦を迎える19世紀末から20世紀初めにかけてアメリカの社会は、移民が急増し、社会主義勢力の伸張や階級間の争いが激しさを増し、新しい女の登場や女性参政権運動の隆盛など大きな変化の最中にあった。

メディアの変化

 一方、メディアにおいては、19世紀後半にはすでに発明されていた多色石版技術の普及や、大型印刷機の登場によって近代ポスターがパリで花開き、新しく誕生したばかりの映画や写真よりも、ポスターがコミュニケーションの花形として大衆文化のなかで流通していた2。アメリカ合衆国では、イラストレーションは黄金期であり、雑誌や印刷文化が隆盛を極めていた。合衆国で2000枚以上刷られ、2500種が街に貼り出された戦争ポスターには、のちの戦争にも引き継がれるプロパガンダ・ポスターの原型を見ることができる。


2 ◇原弘編『世界のグラフィックデザイン――Aポスター・歴史編』講談社、1974年
◇鳥飼行博『写真・ポスターから学ぶ戦争の百年――二十世紀初頭から現在まで』青弓社、2008年

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