4-4 | いかに視覚イメージを読み解くか――第1次世界大戦期、米国プロパガンダポスターを例に U.分析篇:WWIポスターに見るジェンダーの表象 |
描かれる兵士は、健康で戦闘意欲に溢れた兵士【#156】(http://archives.iii.u-tokyo.ac.jp/search/detailresult/id/82)だけではない。ポスターには、自由の女神に救いを求める傷ついた連合国兵士や【#369】(http://archives.iii.u-tokyo.ac.jp/search/detailresult/id/429)、敵の醜い兵士【#60】(http://archives.iii.u-tokyo.ac.jp/search/detailresult/id/407)など、多様な男性身体が登場している。特徴的なのは戯画化された敵や集合体としての兵士だけでなく、ひとりの個体としての若い男性の肉体が出現していることである。ジェームス・モンゴメリー・フラッグの「アメリカ海兵隊員になろう!」(1918年)【#195】(http://archives.iii.u-tokyo.ac.jp/search/detailresult/id/308)は、星条旗を背景にして銃を持つ軍服姿の男性を描いているが、その決意に満ちた表情とひきしまった身体には、新しい時代にふさわしい個人としての理想化された男性像が先取りされているように思われる。 「いっしょに勝つんだ」【#228】(http://archives.iii.u-tokyo.ac.jp/search/detailresult/id/160)では、健康な身体を共有する三人の男性――海軍・陸軍の兵士と銃後の労働に従事する男性労働者――が仲良く腕を組み、歩調を合わせて胸を張り勇ましく前進している。このポスターについて、ジャーナリズムの研究者キャロリン・キッチは、男たちの階級や階層の違いが曖昧化され、労働者階級の男性にも前進の機会を与えるという階級差のない理想的社会としてのアメリカ像が示されていると指摘している20。ナショナルな目的の元に、様々な職業や階級に属する男たちをひとつにまとめようとしたという。
20 Carolyn Kitch, The Girl on the Magazine Cover: the Origins of Visual Stereotypes in American Mass Media, Univ. of North Carolina Press, 2001, pp.104-105.
|